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旧16A8アンプのリファイン目的ですから、ほとんど当時考えた回路をそのまま使いますが、定数変更をして電圧等は見直すこととします。

一番大きい変更はシャーシーサイズで、前作はプリアンプを作ろうと思って買ったW400×D300×H60mmもあるアルミシャーシーに組んでいましたので、アンプの規模の割には大きすぎて邪魔になっていました。

そこで今回はW300×D200×H40mmの小さな鈴蘭堂のSU-5と言うシャーシーに組み込みます。

もちろんこれは大まかなパーツのメドをつけて決定したサイズですが、結果的には少々小さかったかも知れません。

小型アンプになりますからサブシステムとして単独使用もできるよう3系統の入力セレクターを付けることにしました。あとでこれが案外重宝しました。

また、UZ-42シングルのLED内蔵スイッチで失敗しましたので、ネオン球によるパイロットランプとし、しかもブラケット無しのハダカ球で少しデザインを凝ってみました。正確に言うとブルーとグリーンのフローランプです。


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パワー段の動作

そもそも山水の出力トランスが断線してリファインを決めたワケですから、まずは出力トランスを変更しないと話が始まりません。新規購入は考えていませんので手持ちの中から選ぶことになります。

16A8PPで最適負荷インピーダンスは規格から4〜8kΩです。今回は電源電圧の関係で4.5kΩくらいになりますが、実際に測定してみるともう少し高い方が良いことが解り、保存してあるプッシュプル用で7〜8kΩのものを探すとタンゴのU15-8だけでしたのでこれに決めました。

このトランスはUL接続用のSG端子がありませんし、パワーが欲しいので迷わず5極管接続にします。

球はすべて中古でペアチューブではありませんから、バリオームで上下バランスの調整ができるようにします。

少しでもパワーが欲しいので固定バイアスも考えましたが、中古球ゆえのドリフトが心配で手を焼くのでは無いかと思い、結局前作と同じセルフバイアスとしました。これでAB1級動作の7W+7Wを目指します。


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初段と位相反転段

16A8PPですと左右チャンネル分合わせて4つの3極部があるわけで、片チャンネル2つとして他に球を使わないとなるとムラード型はできず、アルテック型のPK分割位相反転になります。

ゲインはNFB分を見ても充分で、元々それで悪くは無かったので今回も同じになりました。


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電源部

このアンプの最大の特徴は電源部ですので話が長くなります。

旧16A8では金銭的余裕の無い学生のころでしたからパワートランスレスとしましたが、今回もリファインでできる限りパーツ流用と決めていますので、パワートランスレスとします。

パワートランスレスにすると電源インピーダンスは低いのでレギュレーションは良いはずですが、実際には色々な問題があり、かなり難儀します。

まず、電源ハム低減から両波倍電圧整流としますが、この場合感電するのでシャーシーにアースすることが出来ず、ノイズの点では不利になります。しかし旧16A8PPでは回路のアースラインをコンデンサーで浮かせてシャーシーに接続したところうまく行ってたので、今回もそのようにしました。

これにはエピソードがあります。若かりし頃、埼玉のアンプ作りベテランのご老体の家へお邪魔した時、シャーシーはすべて木で作っていました。「どうだ、ワカイもんにはマネできんだろ。普通こんなことしたらイッパツでハムが出るぞ」そう言われると悔しくて挑戦したくなります(笑)

でも木で作る趣味は無いし、シャーシーアース無しでいつか挑戦してやろう・・と決めていたのでありました。(*≧m≦)プッ
  次に整流素子ですが、素直にシリコンダイオードを使えばいいのですが、大量に余っているダンパ用高圧2極管の12R-K19をいつしか使いたいと思っていたこともあり、今回も整流管を使いました。この球はカソードとヒーターが独立しており、カソード−ヒーター間耐圧に気を付ければ倍電圧整流に使えます。

しかしこれも電源インピーダンスの低さから充分注意する必要があり、ラッシュカレントから球を破損しかねません。しかも12R-K19はダンパ用途のため規格表からは通常の整流回路に使った場合の出力電流がどれだけ取り出せるかも解りません。(200mAと書いてあるがプレート損失は6.5Wと少ない)

しかし12R-K19はかなり丈夫だと聞いたことがあり、前作でも問題無かったので保護抵抗のみで様子を見てみます。

ヒーターは中途半端な電圧ですが、これも前作ではヒーター用に2つ使っていたトランスを1つだけそのまま流用します。このトランスは31V端子を16A8直列で32V用に、12V端子を12R-K19用に使えますが容量が解りません。

そこで予備実験をして温度上昇を見てみたところ、長時間で最高48℃になりました。たぶん定格いっぱいくらいの電流容量かと思われますが大丈夫そうです。

16A8はヒーターバイアスを掛けていませんが、念のため電位が高い方に位相反転段が来るように接続します。





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