測定結果

入出力特性です。無帰還なのでクリッピングポイントがはっきりしませんが、入力0.9V時に約6.5Wも出ており、最大出力は7Wを超えています。

直結回路ですから入力を入れたら入れただけパワーが出てくる感じです。このアンプのゲインは20dBちょっとあり、実質バイアス電圧は-45Vですから、プラス領域までグリッドをスイングしており、A2級動作です。

これは一瞬の過大入力に追従しますので、力強い音が得られるロフチンホワイトの特徴です。

2A3にムリさせているわけではありませんが、最大出力付近ではプレート損失をオーバーしていますので、調子に乗って大きな入力信号を連続的に入れない方が良いでしょう。




歪率です。無帰還のシングルアンプとしては標準的なものですが、高域10kHzが真っ先に悪くなります。これもロフチンホワイトの特徴でミラー効果によるものです。 全体的には無帰還3極管アンプの特徴であるソフトディストーションカーブですが、10kHzだけはもう少し何とかしたい感じです。




周波数特性です。100kHzまでしか計測していませんが無帰還アンプですのでピークの心配はありません。ロフチンホワイトの特徴が良く出ており、低域寄りの特性です。 もう少し高域が伸びると思ったのですが、やはりミラー効果の影響でもうひとつ伸びませんでした。





ダンピングファクターです。平均1.9です。シングル無帰還の場合、球のプレート内部抵抗に影響されますので回路方式に関係無く、平均的にこの数値になると思われます。

残留雑音は交流点火にも関わらず左チャンネルが0.72mV、右チャンネルが0.9mVで無帰還のシングルアンプにしてはかなりいい数値です。2A3の低いフィラメント電圧がもたらしてくれる恩恵です。しかしこれは2A3を数本挿し替えると大きく上下しますから、球次第と言うことになります。




試聴感想

以前作った2A3シングルとはずいぶん違う印象です。同じ低域寄りの特性でもロフチンホワイトは重さが無く、ダンピングファクターが低いのに締まった印象の音です。追従性が良いからでしょうか。

シングル無帰還ですのでトランジスタのアンプから比べたらヒドイ数値のアンプですが、説得力のある音を聞かせてくれるのは不思議なものです。

このアンプは2A3ロフチンホワイトの個性が強く、整流管を挿し替えてみましたが、違いが解るほどの明確な音色差はありませんでした。もっとも違いが出ないようにキッチリ電圧を合わせているわけですが。

水銀蒸気整流管やガス入り整流管は電圧安定性が良いので、むしろB級動作の多極管プッシュプルアンプで使った方が、音の違いが出るかも知れません。元々の用途はそうですし。
製作後の雑感

友人数人に聞き比べてもらうと完成当時にあったアンプの中では一番評判が良かったのですが、私自身はもう少し高域を何とかしたいと思っておりました。

それには電圧増幅段の6ZDH3Aをあきらめ、複合管にしてSRPPにし、もっと低インピーダンスで2A3を駆動しようかとも考えましたが、多少のことでは大した違いにならず、電圧増幅段の負荷抵抗を1ケタ小さくするなどのもっと思い切った手を打たないと変わらないようです。

そうなると使える球も低rp-MT管の5687などに限られてきますので、このデザインを保ったまま改造するのはかなり難しくなります。

それならば同じ直結でもカソードフォロワーとした方がうまく行きそうで、そう考えてしまうとロフチンホワイトを否定することになりますから、気に入ってくれてる人もいることですし、このまま残して先人の知恵と技術を心に刻むアンプにしたいと思います。


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