代表規格

 6RB116BQ5
 
 
Eh/Ih6.3V/0.8A6.3V/0.76A
最大定格(設計中心値)
Ep315V300V
Pp12W12W
Ec2285V300V
Pc22W2W
Ti250℃---
Ec1----100V
Rc1
(Fix/Self)
500kΩ/1MΩ300kΩ/1MΩ
Ik---65mA
Eh-k+100V、−200V+100V、−100V
代表動作例(A1級シングル)
Ep200V250V
Ip45〜49mA49.2mA
Ec2200V250V
Ic22.5mA〜9.5mA11.6mA
Ec1-12.5V-7.3V
Rk---135Ω
Rp40kΩ---
gm7500μモー---
RL4kΩ5.2kΩ
Po4.5W6.0W
KF10%10%



↑いつものことだが特性図はEc2=200Vのこれしかないため、実際にはだいぶ動作点が違ってしまった。まあ、設計段階で動作点を決める上である程度の目安にはなった。
 

Outline


手持ちの真空管の在庫を調べてみると、本数はまだ相当ありますが、ほとんど中古で状態の良いモノを本数多く持っているものが少なく、ゆえにプッシュプルで作ることを控える傾向があります。

そのため、これからはシングルアンプを作ることの方が多くなるでしょう。

そんな中、6RB11はほとんど新古品で本数を所有していたため、ガラスもキレイだし見ているうちに6RB11を使ってアンプを作りたい、と思えてきました。

そんな大雑把なキッカケから始まったワケですが、久しぶりにPPアンプが作れるぞ?と浮足立ってしまい、他に何も決めていませんでした。

元は垂直偏向用出力管ですが、規格表にはちゃんと「プッシュプルとして高忠実度増幅器の出力段に好適であります」と昭和の言い回しで書かれてあり、それを鵜呑みにしてPPアンプを作ろうと思ったまでです。

と、書いてあるわりにはA1級シングルの代表動作例しか載っていません。そこでその動作例と平均プレート特性図から判断すると、20W程度は出せそうな感じです。

今回は出力より音質重視で10W程度で良いので気安く使えるメンテナンスフリーのPPアンプを作ろうと計画しました。


● ● ●


パワー段の動作


6RB11を使うことだけは決めていますが、どのように動作させるかです。

規模から見ると銘球6BQ5と同じくらいです。サイズは同じ、プレート&スクリーングリッド損失も同じ、最大電圧は若干違いますが、似たようなサイズのアンプになるかも知れません。

大きく違うところはコントロールグリッド電圧で、6RB11の方が深いバイアス電圧なので入力感度もだいぶ低くなります。ドライブ段はそれを考慮しないといけません。

また、いつもなら挿し替えを考えそうですが、6BQ5とはピンアサインも違うため無理そうです。

比較のために両パワー管の規格を左記しました。

今回はスクリーングリッド電圧がわりと高めにできそうですのでウルトラリニア接続(UL接続)とし、出力もある程度取れて低歪になるようにします。

6RB11もあまり作例がないため、バイアスは深めにしてB級に近いAB級とし、メンテナンスフリーにするためセルフバイアスにして程々の出力で様子を見ます。

そうは言ってもグラフのEc1カーブが少なく、カットオフ点がどのあたりか今ひとつ判りませんでしたので、ホントに深かったのか、完成後の動作点が思ったよりも違っていました。




● ● ●


ドライブ+位相反転段の動作


パワー段の入力感度が少し低めなのでゲイン不足にならないように考慮する必要がありそうです。

位相反転はいつもならカソード結合型、通称ムラード型にするかアルテック型のP-K分割を選択するところですが、直結の電圧配分から見てゲインが少し足りなそうです。

散々迷った末に導き出した方式が、QUAD2(クォード2)型の位相反転回路です。QUAD2型はかなり特殊な接続方法で、良くこんな回路を思いついたものだ、と感心します。

利点として低電圧でハイゲインが得られ、無調整でそこそこの性能が得られる点です。この点に勝る位相反転回路はそうそうにありません。

また、音質に影響を与えるコンデンサーが少なく、特にケミコンがドライブ段にない点や、大きなワット数の抵抗を使わなくて良い点、これは電力をムダに熱にしなくて良いと言うことで、省エネです。

こんなに優れた回路ならとっくに特許も切れた現在、もっと普及していても良さそうですが、実際に組んでみて欠点も解りました。これは後ほど明記します。

実際の回路ですが、オリジナルのQUAD2では6267(EF86)を使っていますが、6RB11と同じMT9Pソケットでは挿し間違いの可能性があるため、MT7Pの6AU6を使うことにし、さらに大きすぎるゲインを少し下げるため、NFBを浅くするなど、定数も見直しました。

 

電源部


まず、あまり高圧になって6RB11のプレート損失をオーバーしないように電源トランスは低いB電圧のPMC-190Mを使うことから決めました。

その代わり、今度はB電圧があまり低くなり過ぎないよう、高効率の整流管5AR4とDCRの低いチョークを組み合わせてAB級に相応しいレギュレーションが得られるようにしています。

チョーク後のケミコンがやたらパラになっていますが、これは見た目で手持ちのブロックケミコンをシャーシー上にそびえ立たせたかったためです。本当は220uFあたりが1本あれば事足ります。

また、チョーク後にケミコンの他に250kΩの抵抗もパラに入っていますが、これはスイッチオフ時のケミコンの電荷をリチャージするためです。

パイロットランプはトランスと色を合わせてブルーLEDを使いたいため、わざわざブリッジを入れて直流回路を組んでいます。これはいつもの通りです。



全回路図

黒字青字=設計値、緑字=実測値


→ シャーシー設計と使用部品