測定結果比較のために6Z-P1超3結モノラルアンプのデータも併記しました。6Z-P1を使ったオーディオアンプでマトモに測定結果が公表されたことはあんまりないと思いますので、フツーにCR結合でアンプを作ったらどうなるか参考になるかと思います。 |
本機の裸ゲインは26.9dB、NFB量は-9.38dB、トータルゲインは17.5dB、残留雑音は0.35mVでした。 半波整流の割にはハムも少なく、低雑音に収まっていると思います。これはチョークコイルにKAC-283を使用したお陰で、このチョークのせいで超3結よりも良くなっています。 | |
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入出力結果です。球数が本機は3球で超3結が4球で初段も5極管の6EJ7を使っているのに本機の方が高感度です。これは超3結の方は電流帰還を掛けているためです。 |
両方とも出力は定格通り1Wあたりです。入力を突っ込めばもっと出ていますが、波形は歪みだらけでヒドいため、やはりクリップし始めるあたりが最大出力と言うことになります。 | |
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超3結との性格の差が一番出ているのが周波数特性です。超3結は20Hzでもほぼフラットで低音寄り、本機は20kHzでもフラットな高音寄りです。 でも両方とも悪くありません。出力トランスは共通のT-1200Rで小型の割には良く伸びています。 |
まあ予想通りと言えばそうなんですが、本機は100Hzより下はなだらかに減衰していて、大型の出力トランスにしたらもう少し低域も出るかも知れませんが、これが高rp管の一般的な特性です。むしろ高域は良く出たな、と言う印象です。 超3結の高域が少し弱いのは後述します。 | |
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歪率は超3結には叶いません。本機ももう少し低歪にできるかな?と思ったのですが、小出力時に合わせると最大出力付近で急激に歪が大きくなってしまうので、ほどほどにしました。 |
ま、規格表で1W時に8%とあり、本機の1kHz・1Wで5.6%だったので良しとしますか。高rpの小出力管なので仕方ありません。 | |
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ダンピングファクターです。超3結はシングルアンプにしては異次元ですので比べてはいけません。 本機も平均約2.85ですので、高rp球なのに悪くありません。無帰還の2A3シングルより大きくなっています。これは予想外に得した気分になれる数値です。 |
高域40kHz前後のグラフが縦線になっていて大暴れしていますが、これはなぜか測定値がマイナスになっているせいです。原因がわかりませんが何度測定しても30kHzが-51、逆に50kHzが+24まで暴騰していてこのようなグラフとなりました。 微分補正する際にも30kHz近辺のピークが気になっていたので、ひょっとしたらOPTの影響かも知れません。 | |
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で、答え合わせの結果は?おや? そんなに悪くないぞ?当然、低域のクオリティは超3結には叶いませんが、意外と爽やかな高域と、出しゃばったところがなく聞きやすい音です。 個性がないと言えばそれまでですが、アンプが出しゃばってはいけませんので、これはこれでありです。もう少しにぎやかな音になるかと予想していたのですが、高域の歪率が中低域より低いため、このような印象になったんだと思います。 翌々考えてみたら今までにNFBをちゃんと掛けて作られた6Z-P1のアンプの記事を見たことがなかった、つまり誰も知らないので先入観で大した音ではないだろう、と思っていたため逆の結果が出て印象が良くなりました。 超3結に勝てる部分があるとするなら、この素直に出る高音です。超3結では直結回路に起因するミラー効果で高域の減衰が6Z-P1では特に早い点があり、唯一の欠点と言えるでしょう。 これが気になって後から測定してみたのですが、Cp-g1が4.4pF、Cg1-g2が5.6pF(いずれも1kHz時)もあり、6BM8などのMT管(5極部)と比べると一桁多いです。 |
規格表にCp-gが書かれるようになった時代よりもっと前の球ですので、電極間容量のことを忘れており、超3結を作った時、気づいたら後の祭りでした。もっともラジオの低周波出力管とした用途だったので、当時はそこまで気にする必要がなかったと言えます。それはそうとこのような結果から、6Z-P1でCR結合のオーディオアンプはありか?と言うと、贅沢言わなければありです。つまりオーディオアンプ向きではない、と書いてしまったことを反省しています。 もちろんNFBアンプなんて論外だとか、原音再生に限る、などをモットーにしている方にはオススメしませんので、サブシステムとしてや古典管のおおらかさを許容できる方に遊んで頂きたいアンプです。 記事にも書きましたが、6Z-P1には低発熱、省エネなど他の球にはない利点もあり、夏場の使用も気兼ねなくできます。なにせ6Z-DH3Aや12Fと共に温かい程度で、触ってヤケドしない球なんてそうそうありません。 しばらく試聴してみて答えが解ったので、本機は解体してOPTと真空管は超3結アンプへ戻し、他のパーツは部品箱へ帰っていったのでありました。(あっ、ラジオは解体したままだった・・・) | |
OPT・T-1200Rの表示がメーカーのモノと違いますが、塗装のために一度シールをはがしてシワシワになってしまったので、自作して貼っている。オリジナルデザインなのでメーカー品ではありません。あしからず。 | ||
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