測定結果


このアンプは初期モデルですが、2A3シングルアンプとしては現行製品ですので、解析はしましたが、回路図は掲載しませんのでご了承ください。 でも一応、修理しました、だけではただの報告になってしまうので、測定・インプレッションなどを書きます。



入出力特性です。左と右で少し違いますが、これは球のエミッションによるものです。左右挿し替えればグラフも逆になります。 クリッピングポイントは右チャンネルで0.6V入力時に約3.5Wと2A3の規格表通り、お手本のような特性です。大変使いやすい入力感度です。




歪率です。グラフが見にくくなりますので、右チャンネルは省略し、左チャンネルのみ掲載しています。こちらも無帰還2A3アンプとしてはしごく標準的で、教科書通りと言うべき特性です。 無帰還3極管シングルらしいソフトディストーションカーブです。第2次高調波がほとんどですので数値より歪みっぽさは感じません。

100Hzだけ少し歪みが多いですが、電源ハムを拾っているものと思われます。




出力の小さい3極管シングルですので1V(0.125W)時の周波数特性を計測しました。無帰還でも十分な帯域を確保しているのはさすが2A3です。SRPPの恩恵も出ています。

-1dBの範囲では24Hz〜17kHz、-3dBでは15Hz〜32kHzです(ともに右チャンネル)。
6GA4シングルでも使っていますが、LUXの出力トランス、SS5Bシリーズは小型の割には良い特性を出してくれます。もちろん特性だけでなく、音も良い出力トランスです。

無帰還でピークの心配はありませんので、100kHzまでしか測りませんでした。



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ダンピングファクターは可聴帯域内で左チャンネルが平均1.9、右チャンネルが平均1.6でした。左右の違いはこれも球のエミッションによるものです。SRPPドライブですのでもう少し高めになるかと思われたのですが、これだけは意外でした。ただ聴感上は悪くありません。 残留雑音は左0.6mV、右がなんと5.1mVもありました。これは少し気になったので電源トランスを磁気シールドしてみると3mV程度まで低くなりました。また、どうもチョークトランスと出力トランスが干渉しているようです。

ただ、私の視聴環境ではハムが目立ちません。スピーカーの能率は95dBありますが、視聴位置が約3m離れているため、この数値でも大丈夫です。



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SRPPでもやっぱり2A3

やたら2A3と縁がありますが、ドライブ回路が何であれ、2A3の個性が良く出ています。満たされるような「芳醇」よりも「豊潤」な感じが何とも言えません。

ただ、SRPPらしさが音に出ていないのが少し不思議でした。6Z-DH3Aを使っているせいでしょうか。でも悪くありません。これはこれでまとまった音です。
レストア後の雑感

実は年数が相当経っているせいかトランス類は少しサビが出ています。再塗装しようか迷いましたが、ひどいと言うほどでもないので、今回は見送りました。

あと手を付けたいとしたらやっぱりスピーカー端子でしょうか。昔のアンプはほとんどこのハーモニカタイプが使われていますが、しょっちゅうケーブルを付け替えるマニアにとっては少々使いにくいものです。

スペースが厳しいので何かいいアイデアが浮かびましたら、これもレストアしたいと思います。




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