JBL K2-S5500 フロアスピーカー

JBL K2-S5500 フロアスピーカー


修理前の右スピーカー

↑ エッジ交換前。穴が空いている。
  長年使っていると避けては通れないエッジの寿命です。とくにJBLのウレタンエッジは弱いことで有名で、いずれは貼り替えないといけないと思っていましたので、電気製品の全修理をするならいい機会だと重い腰を上げました。

フロアタイプの大型スピーカーは他にも何機種か使ってみましたが、他機種はどうもうまく鳴らせず、マルチチャンネル駆動したりネットワークを自作や改造するなど、かなり手間をかけ、大枚はたいた割には納得できませんでしたが、予想に反して管球アンプでも鳴らせると言う理由でK2-S5500に落ち着き数十年になります。

予想に反して、と言うのは本機も最近のスピーカーと同じくウーハーのコーン紙が重たい方ですので、管球アンプには向かないと思っていたのですが、能率が高いせいかシングルアンプでもそこそこ鳴らせます。

エンクロージャーはラジアルホーンを挟んで上下別室になっており、ウーハーは同じLE125S-12ですが下の方が容積が大きく、バスレフポートはリアにあり、共振周波数が違うようです。

このスピーカーは重量が90kg以上もあり、ウーハーユニット単体でも10.3kgあるため、キッカケがないといじる気になりません。

さて、修理と言ってもよくあるエッジ交換ですので、説明よりも実際に写真を見て頂ければと思います。

エッジと専用接着剤は有名なファンテック社から購入しました。

なお、下記説明に出てくるソルベントとは何?、ってなると思いますが、シンナーやアルコールと違って樹脂などを溶かさない液体で、元々はペーパーセメントを薄めたり除去するためのものです。

ベタベタした接着剤の拭き取りでは最強で、揮発性が高いため大量に掛かってもコーン紙を傷めずスグに乾きます。但しそのためにスグに閉めないと蒸発してあっと言う間になくなります。また、引火性も高いため火気厳禁です。



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エッジカット 右矢印 フレームラバーはがし

↑ 実測してみるとエッジの直径が4mm大きかったため、まずは全周2mmカット
 
↑ フレームラバーはつまんではがせる
    下矢印
エッジ除去 ←矢印 エッジ除去

↑ フレームに残ったエッジは彫刻刀ではがす
 
↑ ボロボロのエッジは指で取った方が早い
下矢印    
ソルベントで拭く 右矢印 裏側のエッジはがし

↑ ソルベントを流しベタベタのフレームをウェスで拭き取る
 
↑ 裏側はソルベントをかけながらエッジを除去
    下矢印
懐中電灯で見る ←矢印 ピンセットで除去

↑ フレームが太いと暗いのでライトでよく見る
 
↑ 取りにくいところはピンセット使用
下矢印    
マグネットは強力 右矢印 コーン紙裏側に接着剤

↑ 裏側の作業は強力なマグネットとの戦い
 
↑ コーン紙裏側に接着剤を塗る
    下矢印
指で押さえる ←矢印 エッジに接着剤

↑ コーン紙にエッジを入れて指で全周を圧着する
 
↑ 新しいエッジにも接着剤を塗る
下矢印    
フレームに接着剤 右矢印 フレームに圧着

↑ コーン紙側の接着剤が乾いてからフレームに接着剤を塗る。ここからは翌日にした。
 
↑ フレームにエッジを全周圧着する。5〜6mmの隙間なのでアルミブロックを使った。その後すぐにちゃんとセンターに来ていてボイスコイルに当たってないかコーン紙を指で押して確認する。
    下矢印
ビスで浮かせる 完成

↑ ちなみに新エッジこ交換後、確認作業でひっくり返したい時はエッジが地面に当たらないようビスとナットで浮かせて作業する。
 
↑ フレームラバーを接着して完成


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と、手順だけ列記すると簡単そうに見えますが、実は古いボロボロのエッジをはがす作業が結構大変です。

ソルベントを使えば使わないより遥かに作業性が良いですが、完全にはムリですので、新しいエッジを接着してムラや隙間ができない程度のデコボコを想像して根気よく指ではがすことになります。

S5500はこの重たいウーハー・LE125S-12が4つもあるので、乾燥時間も考えて作業は5日掛けました。

  なお、ボロボロになるのはエッジだけでなく、ガスケットもボロボロになるので、ウーハーを外したら交換が必要です。

元のガスケット素材はボール紙のような素材ですが、ネオセル皮付と言うゴムとウレタンの複合素材の方が密着性が良さそうでしたので買ってきて自作しました。t1.5×300×300mmの規格ですが、304mmと若干大きいようです。

ネオセル皮付に図面貼り付け 右矢印 ガスケット完成

↑ ネオセル皮付に作成した図面をプリントして貼り付け。
 
↑ カッターでカットしてガスケット完成。


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信号を入れて修正中

↑ 90Hzの正弦波を入れて確認しながら修正。
 

修正

実はウーハー4個のうち1個だけ数日使っていたら音が歪むようになってきて、センター出しが失敗だったと解りました。

微妙ですがボイスコイルが触れていたようです。しかしこの微妙さ、手で押しただけで解るか?と言うことで、もう少し真剣に測定しながら修正することにしました。

修正はソルベントを使ってもフレーム側の接着は剥がれなかったので、コーン紙側の接着をパレットナイフを使って一旦剥がし、今度はジェネレーターで90Hzの正弦波を入れて確認しながら貼り付けました。

90Hzにしたのは微妙なズレが一番解りやすかったためです。少しでも触れるとジーと数百Hzの高調波が聞こえます。

前回は乾燥後に歪んできたので、修正後しばらくはエンクロージャーに取り付けず、数時間ごとに正弦波を入れて確認し、3日後に取り付け、完了しました。


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