問題のトランス。こんな重たいモノを20個も持っていた。




テレビの抜き球・松下製16A8。テレビもコストダウンと軽量化のためか6BM8よりヒーターを直列で使用する8B8や16A8の方が圧倒的に多く使われていた。




こちらもテレビの抜き球12R-K19。この球、相当明るい。保管箱を見たら10本以上は転がっていた。


  回路構成

トランスありきのアンプですから、そこから全てを決めていかないといけません。

まず2次側の12Vと31Vを有効利用することを考えて球の選定になりました。

B電圧は1次側のタップが多いのでオートトランスでの使用も考えましたが、どれだけ電流が取れるか不明で躊躇したと思います。そこでB電圧は電源トランスレス・倍電圧整流とし、電圧が限られるので低い電圧でも使えるパワー管と言うことになります。

上記の条件で使い切れないほど拾い集めたテレビ球から使えそうな球を探すと16A8が4本ありました。

他に6CW5、6R-B11等12Vタップを直列で使えそうな球もありましたが31Vタップを有効利用したいと思い、16A8にしたような気がします。

今なら31VタップはC電源にと考えそうですが、当時はセルフバイアスしか思い浮かばなかったのでしょう。手持ちのアウトプットトランスのインピーダンスも16A8を使う決め手となりました。

当時の単純な発想で4本あるんだからプッシュプルで、他に球は使わないので位相反転はアルテック型P-K分割と簡単に決めたような気がします。

どうトランスを使ったかと申しますと、電流容量不明のため2つは並列でヒーターに、残りの2つは何とチョークとして使っていました。

整流は余って使い切れない12R-K19を使い、両波倍電圧整流としましたが、ここで疑問点が浮かび上がり、雑誌等でかなり調べた記憶があります。

まずどれくらい電流が取り出せるか解りません。ナショナル真空管・ブラウン管ハンドブックを見ると200mAと書いてありますが、最大プレート損失が6.5Wとかなり小さくなっています。

当時はダンパ管を通常の整流に使った例が無く、大量に手持ちがあることからこれはやってみるしか無いと使ったような気がします。

次にアースをどう取れば良いかが解らず悩みました。電源トランスレスで倍電圧整流する場合、どう考えてもシャーシーにアースを取ると感電しそうです。

これは昔のラジオなどを参考に試してみることにしました。何だったか忘れましたがコンデンサーを経由してシャーシーアースを取っている機器があったと思います。

自分で考えてみて昔のトランスレスラジオがどうして木箱や樹脂箱で、金属製が無いかこの時解った気がします。


使用パーツ

16A8・・・松下マークのものでもちろん捨てられていたテレビの抜き球です。当時はヒーターさえつけば「使えるモノ」と判断していたようです。

規格表を見ると6BM8のヒーター電圧違いの球と解り、まだ抵抗結合データを見て設計していた頃でしたから6BM8のデータが使えると解れば決めるのは早かったと思います。

12R-K19・・・これも抜き球です。十数本あったのでヤケてなさそうなモノを使いました。メーカーはだいぶ消えており解りませんが全て国産です。

アウトプットトランス・・・新品が買える余裕なんてありませんでしたので、ハンパに1つづつあった山水のFW-742とB-702を使いました。たしかこれらも貰い物でたまたま両方とも8kΩでしたので使ったような気がします。

謎のトランス・・・一応このアンプを作ることになった主役です。

シャーシー・・・400×300×60mmのアルミシャーシーで、以前NFイコライザー型のプリアンプを作ろうと思って買っておいたものだったと記憶しています。プリアンプはなぜ作らなかったのか思い出せません。

CR類・・・すべて手持ちの中古です。ほとんどが真空管式のテレビやラジオから外したモノだったような気がします。

パイロットランプとトグルスイッチ・・・他の機器を分解して余ったものだったと思います。ミヤマのマークが付いていました。

ソケット・・・これもテレビから外したモノです。12R-K19の方はローコストなウエハー型を使っていました。

RCAジャック・SPターミナル・・・他の機器を分解して余ったものだったと思います。

以上のようなパーツで買ったものは1つも無かったと思います。コストゼロ円挑戦アンプでした。


→ 回路図が無いので結果