測定結果


測定の際、設計値通りに上下のバイアスを揃えた方が特性は良かったのですが、25E5のバラつきにより出力端子のDC漏れが大きくなるので、バイアスが非対称になりますがDC漏れをゼロにした数値で測定しました。

 


左右の測定値がほぼ同じでグラフが重なるので、入出力以外は左チャンネルのみ表示しています。

また、測定環境の都合上、今回はダンピングファクターが計測できていません。そのうち計測いたします。



入出力特性です。OTLは一般的に32Ωとか200Ωとかの高負荷で測ることが多いですが、、ダミーロードが8Ωしかないため(作れよ・・・と言われそうですが)8Ω時の特性のみです。もっともその方が実使用に近いので参考になります。

1V入力で2Wは出ていますので、25E5をパラにしなくても実用出力は出ています。

但しおそらく正弦波連続2W時はプレート損失をだいぶ超えていますので、実使用は1W以内に抑えるべきでしょうか。


歪率です。これを失敗と見るべきか思ったよりも良かったんじゃ?と見るべきか、で、10年以上前は失敗と見て掲載をためらいました。

ようは通常のOTLはもっと深くNFBを掛けるべき回路ですが、本機はゲイン不足のためNFBは-11dBです。

それでも2Wまではこの数値なら使えなくもありません。3W時は一気にクロスオーバー歪みが増え、部屋を真っ暗にして見ると、うっすらプレートが赤熱し始めていますので、これ以上は入力を入れられません。


周波数特性です。これぞOTLの真骨頂とでも言うべきでしょうか。

但し本機はPTLで、測定機材のアースの都合上、100kHzを超えるレスポンスが計測できません。

一応、マッチングトランスを入れて1MHzまで計測(つまりOTLにならない)していますが、予想通りトランスがありませんのでピークなどなく、もっと深くNFBを掛けても問題ないほど安定しています。



● ● ●


試聴感想


本機で解ったことはOTL、と言うより全トランスレスによる透明度が絶大だった、と言うことでした。

歪率が大したことないのに? と思うかも知れませんが、それなら無帰還3極管アンプもPPアンプより歪は多いのに? と同じ理論でしょうか。

 


トランスの磁界から解放されると、こんなにも良いものか、と思い知らされたアンプでした。

ワイドレンジのノビノビとした音、ノイズやハムフリーの静寂性など、トランス付きアンプでは得られない音です。




● ● ●


使用してみて解ったこと


予想通りで10年以上使ってみて、パワー管をパラレルにしなければ暴走などは起きない、と言うことです。

ならば損失の小さい水平・垂直偏向出力管をパラで使うより、大型管、例えば6C33系や40KG6Aなどをパラにしないで使えばトラブルの少ないOTLアンプになるのではないか、と思います。

但し、暴走とは別問題で、長期使用で無調整だと動作点が少しづつずれてきて、出力端子のDC漏れが出るようになり、数年後には0.5V程度になっていました。

 


0.5V程度でスピーカーを壊すことはありませんが、トランスと同じで直流磁化の問題が出てきますので、やはりほったらかすワケには行きません。

結局はこまめに調整するか、完全に0Vになる保護回路が必要なようです。

また、OTLアンプは過大入力でプレートとスクリーングリッド電流が際限なく増えてしまって危険なため、パワーメーターを装備させたい気がします。

OTLの次作では本機で得られたデータを元に、もう少しパワーのあるアンプを作りたいと思います。


イメージ



← トップへもどる