測定結果

入出力特性です。クリッピングポイントが良く解らないなだらかなカーブですので判断しにくいですが、6AC5GTの規格表通りの出力です。ダイナミックカップルで最初からプラス領域まで振り込んでいますので、入れれば入れただけ最大7W以上も出ていますが、その出力では歪率が大幅に悪化するので実質規格通り4W以内と見るべきでしょうか。

この時の入力は1Vと、使いやすい感度です。もっとも初段の選択次第で入力感度は融通が利きますから、自分好みのゲインに仕上げた、と言うことになります。




歪率です。数値的には少々高めの歪率ですが、知っている限りこれがダイナミックカップルの特徴です。元来、グリッドをプラス領域まで振り込むタイプのアンプは、ダイナミックカップルに限らず、このような特徴が出ます。 しかし3極管らしいソフトディストーションカーブで、数値よりは歪みっぽさを感じません。周波数に関係なく左右で歪みの出方に差があるのは、レイアウトによるノイズの差が影響しているためです。




周波数特性です。-1dBの範囲で48Hz-46kHz、-3dBでは18Hz-60kHzと言ったところでしょうか。

低域でのレスポンス低下は小型のアウトプットトランスのインダクタンス低下によるものです。しかし位相補正もせずになだらかな高域低下のカーブを見ると、大変素直な特性で好ましいトランスと言えます。
もう少しNFBを掛けて低域を改善しても良いのですが、ヒアリングの結果、思ったより量感不足も感じなかったので、ムリにいじらず自然に任せました。

なお、ここでの左右の違いはレイアウトのせいではなく、アウトプットトランスの個体差によるものでした。




ダンピングファクターです。中音域は平均1.1です。6AC5GTの内部抵抗がかなり高いため、指定通りの負荷で作るとこのようになるようです。 もっともダンピングファクターが低いから音が悪いかと言うとそうでもなく、低域がかなり下まで伸びていない分、この方が良いと言うケースの見本のようなアンプです。



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試聴感想

6V6GTプッシュプルアンプがスペック通りの高性能アンプだとすると、このアンプはスペックとは似つかわしくない音のアンプです。

数値的には大したことのないアンプですが、音に張りがあり元気で説得力のある音を聞かせてくれました。まったく不思議なものです。


6AC5GTの音が好きだとは良く聞かれます。それほど歪みっぽく感じないセカンドハーモニクスが主体で奇数次の歪みは低いためだと思いますが、じつは人間は歪みが好きなのでは?と思えてしまうアンプです。

6AC5GTはまさに3極管シングルの音で、2A3ロフチンホワイトとも通じる音色を持っていました。



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使用してみて解ったこと

音の良さもさることながら、このアンプの良さはスペックにも現れないところにあり、とくに低消費電流、それに伴う発熱の少なさも特筆モノです。

これなら最近の異常な猛暑になる夏場でも安心して使用できそうです。

今回初めて5Y3GTを整流に選んで解ったことがありました。この球、高真空整流管だと思っていましたが、どうも使用中に内部を見るとガス入り整流管であると解りました。

見るとCK1006や0A2などと同じ紫色のガスを発光させており、アルゴンガスが封入されているようです。写真を撮影した時はこの程度でしたが、実は新品使用の時はもっと激しくガスが発光しており、プレート外側でもガスの発光が見えました。


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