定電圧放電管や電圧標準管など身近に使うガス入り放電管の中には放射性物質が封入されているものが多いことをご存知でしょうか。 ガス入り放電管は暗い場所では放電開始時に放電が不安定になることがあります。そのためガス入り整流管などでは暗黒下での使用は避けるように書かれています。 しかし定電圧放電管や電圧標準管などはベータ線を発するためのシールドする意味と、電圧精度が必要な放電管は明るさが変わると安定度が下がるため、管璧を黒くして光の影響を排除する放電管が数多くあります。 この相反する条件を解決するため微量の放射性物質を封入して放電開始時から安定度を確保しているようです。 (実際にはどちらが先か私は知りません。ベータ線を出すから黒くしたのか、黒くしたから放射性物質を封入したのか) Western Electricの放電管や他社製でも特殊管にはクリプトン85の他、臭化ラジウムやニッケル63が入っていることがありました。 WE353Aの本体にはKr-85とだけ管頂に書かれており、パッケージの方に認可されている旨が書かれています。不良品の処分のことも書いてあり、当時もやはり勝手に捨ててはいけないようです。 WE413Bに至っては球本体にはクリプトン85を含んでいることは書かれていません。 このように管壁が黒く塗られた放電管は放射性物質が入っている可能性がありますが、微量のせいかメーカーは公式にアナウンスしていない場合も多いようです。 |
管頂にKr-85との表示 WE413Bの場合、管頂には何も書かれていないが、パッケージの黄色面に赤文字での注意説明がある |
シルバニア0A2WAの場合、管壁に注意説明がある |
シルバニアの定電圧放電管・0A2WAはクリアガラスですが、クリプトン85が入っていることが書かれています。 こちらはシャーシー内など暗い場所に設置した場合の放電開始不良を抑えるために封入したようです。 小さいMT管なので見落としてしまいそうですが、よーく見ると写真のように放射能マークとともに次のような記述がされています。 THIS TUBE CONTAINS LESS THAN 0.03 MICROCURIE OF KRYPTON 85. つまり0.03マイクロキューリーのクリプトン85が封入されているとのことで、この事実を知った当時、心配になってすぐにガイガーカウンターを購入して放射線量を計測しましたが、大気中とほぼ変わりませんでした。 もっとも0.03マイクロキューリーと言うのは現在の単位に換算すると約111マイクロベクレルと言うごくわずかな量ですし、この球の製造年である1974年から半減期(10.76年)が3回も過ぎているので、放射線量はほぼ無いに等しく、目立った数値は出ませんでした。 普通に持っている限り問題なさそうですが、ガラスが割れないように念のため注意し、安易に破棄しないようにしなければいけません。管理は所有者の義務ですので、一応意識を持っていましょう。 |
実は今まで割れなければ大して被曝はしないだろうと思っていたのですが、ちゃんと計測してみるとそうでもないことが解りました。 確かにクリプトン85の場合、半減期が3回も過ぎていて大気よりほんの少し多い程度の放射線量でしたが、臭化ラジウムが封入されている放電管は現在でも大気の10倍以上の放射線量でした。 とは言えレントゲンやCTで検査を受けるよりもだいぶ低く、健康被害が出るほどの数値ではありませんので、怖がる必要はないのですが、ずっととなると年間被曝量が10倍になることを意味していますので、人体の近くに置くことは避けた方が良いかも知れません。 なお、このガイガーカウンターはベータ線とガンマ線のみ計測できます。そのうちニッケル63封入の放電管も計測してみようと思います。 |
クリプトン85封入・WE413Bの放射線量数値は0.14マイクロシーベルト/時。 大気は通常だいたい0.1マイクロシーベルト/時以下。 臭化ラジウム封入・WE430Aは1.36マイクロシーベルト/時も出ていた。 (最大1.44マイクロシーベルト/時を表示していた) |
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