測定結果

測定は数値の悪くなる25E5の方で行いました。と言うより間違えて・・・なのですが。12GB3や12GB7の方がヒーター電圧が低い分、SN比や歪率が良くなります。


 

そちらの方はいずれ改めて測定します。




入出力結果です。球が高gm管であることと、むかしかき集めた中古品ですのでバラ付きが大きく、左右で出力差が出ています。しかしこの程度なら聴感上それほど気にならないレベルです。

  球の数を変えられないため、6AN8による電圧増幅ではB電圧の低さも相まって少々鈍感な入力感度です。入力4V時、出力24.5Wあたりがクリッピングポイントです。なおこの数値は12GB3や12GB7に挿し変えるとバラ付きにより大きく変わりました。




周波数特性です。きっちり位相補正をやってやっとこの程度に落ち着きました。やらないと超高域でのピークが大きくなり、プラスまで行きました。

球によってはマイクロホニックノイズやショックノイズを出すものがあり、それによっては高域特性に大きな影響を及ぼします。


  左チャンネルは287kHz、566kHz、830kHzに、右チャンネルは260kHz、430kHz、566kHz、910kHzにピークが現れましたがここまで抑え込んでいます。

しかし6AN8も25E5も元々テレビ球ですので位相補正をせず、特性など気にしないでほっておけば高域はいくらでも伸びます。




歪率は古い(小さい)ダミーロードの時に測定したもので、大きな出力が計れませんでしたのでとりあえず10Wまで、また左チャンネルのみです。

10W以上は入出力特性測定時の予想ですが、クリッピングポイント以降は波形の乱れが激しく、たぶん25Wあたりから急激に悪くなっていると思います。

  しかしこのアンプの歪みの問題は数値に表れていないところで、B級プッシュプル特有のクロスオーバー歪みが目立ち、何とか減らそうとすると選べるバイアス電圧はかなり狭いもので、これが水平偏向出力管の難しいところです。

また、低レベルでの歪率悪化は改造前と同じで、パワートランスレスがゆえの電源ハムが完全に取り切れていないためのものです。




ダンピングファクターも古いダミーロード時のものです。可聴帯域で平均1.56です。

NFBをもう少し増やしたいところですが、ゲインが足りていませんのでこの程度にしました。

  グラフ以外の測定値ですが、残留雑音は約2.5mVです。プッシュプルにしてはヒドイ値ですが、シングルアンプと思っていれば普通です。スピーカーに耳をそばだてれば気になるレベルです。

これもパワートランスレスがゆえの電源ハムが完全に取り切れていないためのものです。


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試聴結果

数値的にはやはりひどいアンプです。ところが音を出してみるとわりとマトモな音がします。広帯域なのでどのようなソースでもほどほど聴かせてくれます。また、気になるはずの残留雑音の数値ですが、低感度が幸いして実使用時は入力レベルを大きくしますから、思ったほど気になりませんでした。

とにかく波形の乱れがひどいクロスオーバー歪みですが、どうも人間の耳には奇数次の歪みには敏感で不快感が強く、クロスオーバー歪みは逆に聞き取りにくいようです。

波形の「形」が変わる・・・と言うことはノイズや歪みが増えると言うことではなく、音色が若干変わる、と言うことのようです。原音再生からはほど遠い結果になりますが、これがクロスオーバー歪みを不快に感じさせないことのようです。

 

これで何とかBGM程度には使えるようになりました。改造で以前よりだいぶ良くはなったものの、まだまだです。

普段は滅多にお目に掛かれない悪い事例に出会え、ノウハウを得るには良い実験機となっていますので、他のアンプよりも可愛い子です。

ベースが数十年前に作ったアンプにしてはデザインに手を抜かなかったので、それを保ったままの改造となると制約が多くて苦労しますが、それも楽しみのうちです。もし改造で穴だらけ・・・などになったら即、粗大ゴミ化しますので、愛着を持てるようデザインすることは大事だと気が付きました。

6AN8も12GB7/25E5もヒーターが明るいので見た目の雰囲気は良く、見栄えはしますので、ヒマを見つけてはいじり倒すアンプにしたいと思います





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