故障の原因

電気製品の修理をしていると、一見しただけでは原因が解らないことがほとんどだと言うことは身にしみていますので、カクゴをして当たります。

まず、バリオームの位置でハムレベルが変わるのはバリオームをシールドし忘れている、と言うのが容易に想像が付きます。

でも確か前にちゃんとアースしたハズ・・・と思っていましたが、以前、ガリが多くなって来たので交換したことを思い出しました。その時にアースし忘れたようです。

バリオームは高価なモノを使用すると音が良くなりますが、本機は元がジャンク品で作ったアンプでお金を掛けない、と言うコンセプトがありますので、なるべく安価なものを使っています。

また、バリオームは高価なモノを使ってもいずれガリは出ることが解っているため、本機では消耗品と割り切り、ガリが出たら気楽に交換すると言うスタンスでいます。

バリオーム交換で音量最小と最大時だけハムレベルが高いと言うのは解消されましたが、ではなぜ急にそのような現象が出たか説明が付きません。


 

そこでもうひとつの発振気味になる現象も合わせて探ってみたら、他にも不具合が色々出てきました。

デカップリングで内部に使っているケミコンを外して計測してみると、47uFの規格のモノが数pFとなっており、容量抜けを起こしていました。

これは左右とも交換です。数十年前の製品ですので寿命が来てもおかしくないです。

また、そのケミコン下の配線がハンダ付け不良により接触不良になっていました。これが動作不安定の原因だったようです。

えっ、これ、ベテランとまでは行かないまでも初心者とは言えない自分にとってあるまじき不良!

でもこれ、良く考えてみるとベテランになればなるほどありそうな不良です。年齢を重ねると老眼が進行し、ハンダ付け後が見えにくいため、前回の改造時に見えなかったのかも知れません。

まるでベテランドライバーのアクセルとブレーキ踏み間違えと同じです。確認不足と言えばそれまでですが、今後、気を引き締めていかないと。自分に喝!




黒字=設計値、緑字赤字=実測値


6AN8の動作変更改造

実はずっと気になっていたことにメスを入れることにしました。

以前から6AN8はマイクロフォニックノイズやフリッカーノイズが多いのでは無いかと思い、何本も挿し替えて見ると、ノイズレベルに物凄く差があります。

残留雑音が0.5mV程度のものもあれば10mV以上になるモノもあり、相当選別しないといけませんが、そうなると手持ちの6AN8をほとんど捨てないといけません。

そこでノイズの多い球も何とか使えないかと考え、ゲインを欲張らなければ多少ノイズは減らせるのではないかと思い、初段を三結に変更することにしました。

本機は元々高出力B級動作を狙ったため、かなり深いNFBを掛けており、そのために初段のゲインも必要、ゆえに安定度もイマイチなので位相補正も多めに、と悪循環に陥っていましたので、これを全面的に見直します。

出力、入力感度は犠牲にしてでもノイズを減らし、ついでに歪みも減らすことを考えます。

振動ノイズは初段のコントロールグリッドに保護抵抗を入れ、寄生振動を抑える方法もありますが、歪が増えるのと、6AN8はそれだけでは済まないだろうとの予測から、三結にしてゲインを抑えるようにします。

また、それに伴いパワー管もバイアスを浅くします。となるとバイアス電源も倍電圧整流までする必要がなくなるので、普通のシリコンダイオード1本だけの半波整流とし、部品点数を減らして故障率を低くします。



 

しかし良く考えてみると、三結にするくらいなら6AN8を使う理由もなくなり、同じMT9Pでももっと性能の良い12AX7などを使えば良さそうなもんです。

つまり今回も本末転倒具合満載になってしまいました。いいのいいの、このアンプは意地でも6AN8で。




以前、3連RCAピンジャックだった時




2つのRCAピンジャックとトグルスイッチにした後
わざわざベーク板に同色塗装をして取り付けている



● ● ●


スイッチの用途変更

元々3連のRCAピンジャックを装備していましたが、L、R、MONO入力にしていました。

RCAピンジャックが接触不良になり交換することにした時、MONO部分を潰し、空いたところにトグルスイッチを付けて、ステレオ/モノラル切り替えスイッチにしていました。この修理改造、記録し忘れのため、いつやったのか覚えていません。

モノラル音源の時に使おうと考えたのですが、思ったより使いませんでしたので、4Ω/8Ωスピーカーインピーダンス切り替えスイッチに変更しました。こちらの方が実用的で良く使います。


  保護抵抗の断線

改造と言うより修理ですが、B電源の倍電圧整流前に5Ω/5Wの保護抵抗を入れていますが、測定中に断線しました。

いい機会ですのでここも良く測定・検討し、電圧降下が少々大きいので1.5Ω/10Wに変更しました。ここ、測定してみると5Wでは少々ディレーティング不足でした。切れるワケです。


メーター照明球の断線

なぜか手を加えている最中に色々と不具合が出てくるものです。メーター用の電球も調整中に断線しました。

まだ同じ12V/40mAのムギ球の在庫があったので交換しました。




修理改造後の内部。1=不良交換したケミコン 2=ハンダ付け不良があった部分 3=三結に変更した初段まわり 4=NFB受け抵抗は調整で変えるためリード線が長いまま 5=半波整流に変更したバイアス部 6=アースに落としたバリオーム 7=修理交換した保護抵抗 8=球切れ交換したメーター球 9=MONO/STEREOスイッチに変更


→ 測定結果と試聴