測定結果

測定は今回も数値の悪くなる25E5の方で行っています。しかも使用環境で使っているエミッションがだいぶ落ちてきた使い古しの球ですので、その分は割り引いて見てください。

6AN8も同様でノイズの多い球を使っています。まあ、これは改造によるノイズの低減度を見るためです。


 

本機はプレート電流を揃えるように調整していますので、球のバラつきによりグリッドバイアス電圧は上下で揃っていません。その状態で全ての測定をしています。

また、そのバランス状態でグリッドのバイアス電圧は浅い方を設計値通りに調整し、もう片方(深くなる方)は成り行きにしています。つまりプレート電流が流れすぎないよう安全圏を考えてのことです。




入出力結果です。実は元々数十年前に設計した段階でミスがあったため、入力感度が低かったことが後になって解りました。それもあって今回は初段を三結にする決心が付いたんです。

で、予想通り、三結にしたのに旧回路より入力感度が上がっています。と言っても一般的なアンプに比べたら入力感度は低い方ですが、思ったより使い勝手は悪くないです。


  クリッピングポイントは入力1.38V時に約17W弱で、そこから徐々に波形の頭が潰れ始めると同時にクロスオーバー歪も出始めます。

つまりこのあたりからB級動作に移行しているようで、入力を増やせば出力はもっと増えますが、20Wで歪率10%を超えますので、18Wあたりが最大出力と言えます。




実はマトモに周波数特性が計測できませんでした。と言うのは本機がパワートランスレスでAC電源のコールド側=アースのため、接続機器によっては家のブレーカーが落ちるためです。(ラインフェーズセンサーを見て極性を合わせても落ちる)

ウチではSONYのテレビや広帯域のファンクションジェネレーターを入力端子に接続するとブレーカーが落ちます。

そのためテレビやFGを接続する時はタムラのインプットトランスを使った自作のアダプターを入力につなげて使用しています。

そのトランスのせいで正確に測定できないワケですが、超高域の傾向くらいは解るので一応測定し、位相補正を考えています。
ただ、幸いなことにPanasonicのオーディオアナライザーはアースを切れるため直結して測定することができ、100kHzまではマトモに測定できています。

結果、ほとんどフラットで10kHz〜100kHzの間はピークがなく、ラックスのOPTが優秀です。100kHz少し超えたあたりまで少し盛り上がっていますが、この先はインプットトランス経由で測定した結果で大きなピークにはならないだろうとの楽観的予測で、今回は位相補正をしていません。

厳密にやったらたぶん必要になると思いますが、音がつまらなくなるのと、後述する理由で位相補正せず、問題が出たらしようと言うことにしました。

と言うワケで本機は超広帯域アンプです。


 

インプットトランスをだいたい常用。このようなトランスは通常、音が良くなるから?などの理由で使用する人が多いと思うが、本機では絶縁目的だけで使用している。



歪率は以前、マトモな測定をしていませんでしたが、改めてちゃんと測定してみました。

なお、本機は固定バイアスでセッティングによってコロコロ数値が変わるので、LRの両チャンネルを表示しても意味がなく、同じバイアス電圧ならL,R共ほぼ同じ値になることだけ確認しましたので、Lチャンネルのみ表示しています。

元々の設計がいい加減だったため、今回の改造で歪率は劇的に改善されています。と言うか並のPPアンプに戻ったと言うべきでしょうか。


  12W位までは1%以内に収まっており、実用帯域では問題ありません。100Hzだけが少し高いのはトランスレス機特有の電源ハムが混入しているためです。

グラフ以外の測定値ですが、残留雑音は約0.6mV、ダンピングファクターは全帯域で左1.9、右1.8程度でした。

通常、もっと波があるもんですが、全然波がないのでグラフにするのを辞めました。実はこれが位相補正をしないもうひとつの理由です。おそらくひどいピークが無いためだと思われます。

但し右チャンネルはたまにノイズレベルが数十mVに上がることがあり、それに関しては引き続き原因究明中です。


● ● ●


試聴結果

肝心の初段を三結にした結果ですが・・・絶大です。

以前はスピーカーからマイクロフォニックノイズやフリッカーノイズがわずかに聞こえていたものが完全に消えました。

この測定値と試聴結果は以前7mVものノイズが計測された6AN8を使っています。もっとローノイズの6AN8に挿し替えればもっと良い結果になるでしょう。

ゲインを欲張らなければ6AN8でも何とかなると言う実例になりました。考えてみたらダイナコなどのメーカー製アンプにも使われた球ですので、何とかならないとイケナイわけですが。

 

しかし本機の特徴であったタマの息吹きが消えてしまったのも何となく残念な気もします(謎)

マイクロフォニックノイズやフリッカーノイズは球らしさを感じる部分でもあり、曲間の無音時にピーンとかチリチリとか聞こえると球アンプを使っていたんだ、と感じます。このノイズを楽しめてこそオトナ?

ま、それに引き換えかなり美音になりました。たまに上がるノイズレベル以外は何も問題がなくなってしまい、手の掛かるハズのアンプをいじる楽しみが減ってしまいました。

これでさらに本機の使用頻度が上がるでしょう。今回の修理・改造は楽しめました。




今回は内部の修理・改造ですので外観は変わっていません。


→ さらに修理 │ ← トップへもどる