16A8PPアンプ・泥沼の改造その2


ヒーター交流点火・半波倍電圧整流

またしばらくはそのまま使っていましたが、半年ほどして急にアンプが気絶するトラブルが発生、原因を探ってみると整流管12R-K19のオーバーヒートであることが解りました。

やはり小さいシャーシーに発熱の多いMT管6本、ヒーター直流点火による発熱増加、丈夫だと思っていた12R-K19の許容損失等が色々影響しています。

普段は気づかなかったのですが、部屋を真っ暗にして見ると12R-K19の上側に当たる球のプレートがうっすら赤熱しており、かなり負担になっていたようです。
  そこで全体熱量を下げるための大改造をすることにしました。

まずは直流点火の廃止をし、そのためにノイズ・ハムが増加しますので、諦めてシャーシーアースを取るとこにしました。シャーシーアースを取る以上、感電するので全波倍電圧整流は使えません。これも半波倍電圧整流に変更し、AC電源のホット/コールド側を合わせるためラインフェーズセンサーを付けることにしました。

半波倍電圧整流によって少しは12R-K19の負担も減りますので、この改造で様子を見てみます。




0.02μFと10kΩは付けたまま、ジャンパー接続で無効にしている。

この改造でノイズレベルに関しては劇的に向上しました。やはり悔しいけどシャーシーアースは絶大な効果です。左チャンネル最小0.4mV、最大0.84mV、ボリューム中点2.2mV、右チャンネル最小0.74mV、最大5.4mV、中点はなだらかで1mVと言ったところです。

数値的には対して変わっていませんが、これは全波から半波整流になったため電源ハムが50Hzとなり目立つようになったせいです。しかし耳障りなヒスノイズが大幅に減ったため体感上は大きく変わった気がします。

気になる12R-K19は中古と言うこともあり、まだ球によっては少し赤熱するようです。倍電圧整流に使うこと自体無理があるかも知れません。

ラインフェーズセンサーはセンサー部に指を触れ、ネオンが点灯すれば極性OK、つかなければACプラグを逆に差し込んで使うようにします。これを怠ると感電します。
 

取り付けたラインフェーズセンサー。指を端子に触れ、ネオンが付けばOK。指で穴が隠れているが、バナナプラグ用の端子なのでテスター棒を挿してキッチンのシンクなどに触っても確認できる。



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オートトランス型に変更

シャーシーアースにしてだいぶマシになりましたが、12R-K19の動作状態にはまだ不安があるため、電源トランスレスを諦めて、今あるヒータートランスの1次側をオートトランスとして使うことにしました。

このヒータートランスは元々輸出用機器の電源トランスなので、1次側が250Vまでの細かいタップがあります。これで倍電圧整流から通常の半波整流になり、12R-K19の負担はかなり減るハズです。

シャーシーは既に12R-K19が2本並ぶように設計してしまっていますので、12R-K19は並列接続して動作が軽くなるように使います。B電圧ももっと上げることができますが、信号部分の定数を見直す必要があるため、とりあえず改造前と近い動作電圧にし、トランスの200Vタップから電圧を取り出します。
  ケミコン2本は耐圧150Vのため直列にし、上下電圧のアンバランスでの破壊を防ぐためブリーダー抵抗によって電圧比を同じにしています。

これでコンデンサーインプットの容量は半分の50μFとなり、整流管にも安心です。

但しこのままではトランスレスと対して変わらず、容量不足による電源ハムは避けられないので、200μFケミコンと47Ω抵抗で、デカップリングをもう1段追加しました。

ここまでやると電源インピーダンスが低いはずの電源トランスレスの意味が無くなってしまう気もしますが・・・(笑)


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NFBを深く

スピーカーによっては音に少し腰の弱さが感じられ、ダンピングファクター向上とSN比向上のためNFBを設計値-6dBから-12dBに変更することにしました。入力感度が高すぎたこともあってずいぶん使いやすくなります。
  今までピークらしいピークも無かったのですが、さすがにNFBを深くすると268kHz付近にピークが出て来ましたので、330pFのコンデンサーを並列に入れ補正しました。

ここまで来ると製作当初と大きく変わっていますので、最終全回路図と改めて測定したデータ(次ページ)に表示します。





この回路はだいぶ良くなったとは言え、お勧めできるモノではありませんので、しょうもない実験だと思って見てください。

ラインフェーズセンサーを付けたとは言え、プラグのホット側とコールド側を間違えるとシャーシーに触れた時に感電します。

昔のトランスレスラジオはこのような理由で木製やプラスチック製の筐体になっており、シャーシーには直接触れることが無いようにされていました。

今はPSEが厳しくなりましたが、その観点から見るとこのアンプは間違いなくアウトです。何でも数年前から半波整流の機器は禁止になったとか。
 


→ 改造後の測定結果