測定結果


本機は中古球を前提としているため、テスト球を固定して測定しました。マジックアイは左にトーヨー6E5、Em=76%・輝度60%のものを、右にトーヨー6ZE1、Em=81%・輝度70%のものを使用し、パワー管は12GB3のプレート損失ギリギリに設計していて測定に使うには危ないため、12GB7を使用しました。0B2は107.3Vで安定するモノを左右に選んでいます。

輝度70%のマジックアイなんてまだまだ使えるじゃないか、と言われそうですが、輝度が相当低下したモノは測定値がふらついて測定しにくいため、安定した球を選んだと言う理由です。

本機の裸利得は約25dB、オーバーオール負帰還-7dB、PG帰還B-8dB、MLFでの合計帰還量は-11.4dB(7+8=15dBとはならない)、全体のゲインが14dBとなりました。

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入出力特性



周波数特性




左図は入出力特性です。2V入力時に左5W、右6.2Wとなりました。中古球を使っているため、挿し替えるとコロコロ変わるのでだいたい5Wと見ておいた方が良さそうです。但し予定通りゲインが低めなので低感度入力です。

ただ、実際に使ってみると最近の入力ソースは出力電圧が高いため、この入力感度でも思ったより不満にはなりませんでした。

周波数特性も同様です。左右の球を挿し替えると特性も左右逆になります。

低域はOPTが小さいためインダクタンス不足で早めに低下しています。それでも右は20Hzのポイントが-2.9dBと、メーカー製のミニアンプよりは出ています。

高域のピークは思ったほど大きくないので位相補正せずほったらかすことにしました。

370kHz近辺と920kHz近辺のピークはグラフにすると大きく見えますが、-16dB以下なので心配ありません。気にするとしたら小さいコブの106kHzです。

グラフがカクカクしていますが、これはピークの最大・最低ポイントをプロットして直線でつないでいるため、実際にはもう少し緩やかなカーブです。

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さて、一番気になっていた歪率ですが、MLFの効果が出ており思ったより良い結果となりました。

OPTのコアボリュームが小さいので100Hzは少々多めになっていますが、高域になればなるほど歪は少なくなっており、常用ゾーンの0.1Wあたりは0.1%台まで低くなっています。

歪率は元より他の特性もOPTにもっと大きな(豪華な?)モノを使えば、もっと良くなりそうですが、ローコストが一番の目標なので、これならOKです。

歪率特性




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ダンピングファクター特性



ダンピングファクターは平均2.6でNF量の割には低めですが、ビーム管接続ですし元々のパワー管の内部抵抗が高いので予定通りと言ったところでしょうか。

低域は上昇で締まりのある低音、高域は下降していて柔らかい音となり理想的です。

左の20Hz以下が切れていますが、測定し忘れました。失礼・・・。




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まとめ


作る前はマジックアイはゲインが低いし水平偏向出力管は歪が多いし、お互い足を引っ張りあってとてもHi-Fiはムリかな?と思っていたのですが、いい意味で期待を裏切って常用できるアンプに仕上がりました。

300Bや211を使った名器にはかなわないかも知れませんが、そこそこのHi-Fiに使える(Hi-Fiの定義については異論があるかも知れませんが)アンプになり、何より球のコストが安いので、気楽に電源を入れられるところが本機の良いところです。

また、軽量(6.2kg)、低消費電力(83W)なところも気安く使える良いところです。

ローコストにとらわれず、OPTにもっと良いものを使ったり、電源トランスに電流容量のもっと大きなモノを使って、プレート電圧・電流を増やせば、もっと良くなると思います。


リアパネル

↑ 本機のリアパネル。RCA入力端子はケーブルの汎用性を考えて左右離したくなかった。


結局マジックアイはどう?


マジックアイはアンプとして使えるか、ですが、使えなくもない、です。

先ほどの「後述します」の内容ですが、実はアンプとして完成してみたら仮組みの実験では解らなかったことが解りました。

実験数値としてはターゲットはオープンの時が一番良かったのですが、実際にアンプとして使った場合ノイズレベルが不安定で、たまにハムも拾いまくり、どのような時か特定できませんでしたが残留ノイズが30mVを超えることもありました。

考えてみたらパラボラアンテナにも見える形のターゲットは電位を安定させないとノイズやハムを拾いまくるようで、ST管用のシールドケースをかぶせただけで見事に1/10まで減少しました。

それでも3mVですから何とかしないといけません。で、前述した4つの方法を全てテストしたところ、マジックアイはインジケーターとして使っている時と同じ、ターゲットに高圧を掛けて光らせている時が0.15mVと最も良い結果となりました。歪率など他の特性も同様で一番でした。

これは輝度の低下した中古品なら惜しくはありませんが、もし新品に近い明るいモノを使うのでしたら、ずっと光らせておくのもモッタイナイ気がします。

そこでプレートと同電位、もしくはアースに落としてみた結果、0.3〜0.6mV程度と、2倍にはなりますが実用的な数値、ゲインの低下も僅か、他の特性も目立って悪くならなかったので、TA-P耐圧の長期テストのつもりでアースに落とすことにしました。本機の測定値は全てこの状態の数値です。

これで点灯はしませんが、プレートと同電位にして中途半端にくらーく光っているより良いと思います。

マジックアイは増幅管として使う場合、気を使わないとイケナイわりには増幅率が低いので、遊びで使う分には良いですが、Hi-Fiアンプには好んで使うことはないでしょう。



ヒーター点灯

ヒーターが明るい球ばかりで雰囲気バツグン。0B2はプレート内部でガスが紫色に怪しく光る。




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弐号機について少しご紹介


本機をベースに弐号機はもう少し簡易版として製作し、電子工作マガジン/2022年春号(3月19日発売)に掲載いたしました。

弐号機は市販のシャーシーを使い、もう少し小型で定電圧放電管も廃止しています。他に初号機で気になった点も改良しています。

但し初号機の方が0B2でパワー管のSG電圧をふんばらせているのと、弐号機は12GB3時の電圧・電流の安全圏をもっと取っているので、出力は3.5W+3.5Wと少なくなっております。

そちらは製作記事ですので、当HPと違って作り方などを紹介しています。宜しければご覧ください。

弐号機

↑ 弐号機は余ったSELの廃版トランスを使っているが、記事では現行品を推奨しました。



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