測定結果


今回はたまたまセットしてあった2A3+ML4+5Z3の組み合わせのみで測定しました。

その2A3もマルコニーの使い込んだものでしたので、8年前の完成時の測定より性能が低下しているかもしれません。

メインはプレートチョーク変更による変化だけですので、それが判れば良いことにします。

但し前回は全て左チャンネルを表示しましたが、今回は全て変化の大きかった右チャンネルにします。


2A3ですのでスイッチポジションは+B電圧=Low、バイアス=Highです。

フィラメントは直流点火の方が若干SN等良くなるとは思いますが、2A3では交流点火の方が一般的ですので、他のアンプと比較できることもあってそのようにしました。

各部電圧測定もしましたが、プレートチョークを変更したドライバー段だけ少し違う程度ですので、とくに回路図表記はしませんがご了承ください。


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2A3+ML4+5Z3使用時の入出力特性




プレートチョークを変えたくらいではほとんど変わっていません。

変える前のLUX 4691時の方が曲線が伸びているように見えますが、ジツはTANGO TC-160-15Wにしてからムリに入力を入れて測定しなかっただけで、結果的にはほぼ同じです。

ただ、クリップ後はTC-160-15Wの方が僅かですが出力が大きくなっています。ホントに気持ち程度です。


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プレートチョークを交換したら僅かに歪は増えてしまいました。と言ってもホントに僅かで気にするほどではありません。

但し前述のようにタンゴのチョークの方がシールドが厳重なので、外部からのリケージフラックスの影響を受けにくく、小出力時の歪率が改善しています。

NFBによる効果も以前と同じです。例としてR-ch・1kHz・0.1W時に無帰還で0.5%のところ、NFB-6dBで約半分の0.26%と、計算通りの数値です。つまりNFBスイッチを-3dBにすれば歪率も約3dB減ることになります。

今回測定していませんが、おそらく一番定格の大きな300Bにすればもっと歪率は低下すると思われます。

2A3+ML4+5Z3使用・無帰還時の歪率



2A3+ML4+5Z3使用・NFB-6dB時の歪率





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2A3+ML4+5Z3使用時の周波数特性



高域は位相補正したのでピーク(水色の線)は無くなりましたが、プレートチョークを変更したら今度はNFB-6dB時に低域4Hzをピークに+3dBも盛り上がってしまいました。

以前は1W時の特性を計測したため、低域の盛り上がりは目立ちませんでしたが、今回は1V(0.125W)で計測しましたので、発覚した形になりました。

インダクタンスがTC-160-15Wで増えたのでさらに低域は伸びる分、カップリングコンデンサーとの共振周波数によりこのようになってしまったようです。

これが気になって今回は1Hzから測定しましたが、特段不安定になることはなかったので、このままにしますが、何か不都合がが出たらまた改造するかも知れません。



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2A3+ML4+5Z3使用時のダンピングファクター





TC-160-15Wに変更して僅かに上がっていますが、オン-オフ法での計測ですので、この程度のダンピングファクターの違いは誤差範囲です。

測定していませんが、おそらくPX25と300Bもプレートチョーク変更による差はわずかかと思います。




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2A3、300Bの各AC・DC点火時の残留雑音

TC-160-15Wにしてマトモに残留雑音が測れるようになったので、今回は普段あまりやらないAC点火とDC点火の比較とNFBによってどの程度残留雑音が変わるかも見てみました。

これはスイッチで手軽にAC/DC点火やNFBの切り替えができる本機ならではの機能ですので、参考になると思います。

なお面倒なので2A3はたまたま出していたのでマルコニー、300Bはセトロンで計測しました。ドライバー管は両方ともML4のまま、整流管は実情に合わせて2A3時は5Z3、300B時は83で高電圧設定にしました。

予想通り2A3はフィラメント電圧が2.5Vと低いため、AC点火・無帰還でも1mVを切っており、充分低い数値でした。これが2A3の良いところです。

そのため2A3を直流点火で設計する人はあまりいないと思いますが、試しにDC点火してみると、NFB-6dBに右チャンネルで0.21mVと、プッシュプルアンプ並に大変低い値となりました。

300Bも良く言われる通りです。直熱管でフィラメント電圧が5VもあるとAC点火ではハムを抑えるのが難しく、無帰還時は2.1〜3.6mVです。でもこれくらいならスピーカーの能率によっては充分使える範囲です。

これがDC点火したとたん各平均0.5mVとなり充分低くなりました。

PX25は測定していませんが、おそらく2A3と300Bの中間になると思います。



残留雑音L-chR-ch
パワー管NFBAC点火DC点火AC点火DC点火
2A30dB0.48mV0.42mV0.54mV0.32mV
-3dB0.42mV0.32mV0.42mV0.27mV
-6dB0.31mV0.24mV0.28mV0.21mV
300B0dB2.1mV0.76mV3.6mV0.69mV
-3dB1.6mV0.61mV2.8mV0.52mV
-6dB1.2mV0.47mV2.0mV0.39mV


よくフィラメントは片側が減るからAC点火の方がいいと言う話は聞きますが、ホントでしょうか。

それを証明したと言う話を聞いたことはありませんので、DC点火でも寿命は変わらないような気もしますが、スピーカーによってハムが目立たなければ、本機はAC点火で使用することもできます。

今回、球を挿し替え、AC・DC切り替えをして思ったのは、ハムバランサーをフロントパネルに出して正解だった、と言うことです。

同じ球でもACとDCではハムバランスポジションが若干違いますので、最低にするには調整の必要がありました。

ただ、変化量は少しなので気にしなければ別にいじらなくても大丈夫です。調整はACの方がクリティカル、DCはダルな感じでした。




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インプレッション

以前は300Bで右チャンネルがAC点火時に5mVもあった残留雑音ですが、NFBを-6dBにすれば2mVまで下がりました。

いくら電源トランスの磁気シールドが厳重だとは言え、やはり信号回路に使うチョークが電源トランスに近いと結構影響がでます。

TC-160-15Wにしてインダクタンスが増え、もっと低域がふくよかになりましたが、今回はこのシールドの効果の方が大きかったように感じます。

残留雑音が低くなったおかげで微小出力時の歪率も下がり、小音量時でも音の豊潤さが増しました。

気になる4Hzの盛り上がりですが、測定したから気になっているのであって、試聴して解る感じがしませんでしたので、このままほったらかします。


 

解りやすくモーターボーディング等が出れば話は別ですが、初段とドライバー段を直結にしていたため時定数が1つ少なく、そのような心配はありませんでした。

もし直結ではなくCR結合でしたら、ひょっとしたらモーターボーディングが出ていたかも知れません。

但しチョークのインダクタンスが増えた分、設計値より容量過多になってしまったカップリングコンデンサーの容量を減らすなど、対策は視野に入れておきます。

LUXの4691でも充分良い音でしたが、今回はレイアウトの都合上、TANGOのTC-160-15Wの方が良かった、と言う結果になりました。

文字入れをして使い勝手も良くなり、やっとトライオードサウンドを楽しめるリファレンスアンプとなりました。


PX25+ML6+CK1006で使用中

↑ PX25+ML6で使用中。CK1006はフィラメントオフでのオペレーション。


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