最大定格
プレート電圧315V
第2グリッド電圧315V
プレート損失11W
第2グリッド損失3.75W
第1グリッド抵抗(固定BIAS)50kΩ
第1グリッド抵抗(自己BIAS)500kΩ
代表動作例
プレート電圧250V
第2グリッド電圧250V
プレート電流34〜max35mA
第2グリッド電流6.5〜max9.7mA
第1グリッド電圧-16.5V
相互コンダクタンス2500μモー
プレート内部抵抗80kΩ
負荷抵抗7kΩ
出力3.2W
歪率8.5%




↑タンゴのFW-20-7S。元々VT-62/801Aパラレルシングル用に設計されたトランスなので、UL接続用のSG端子は無い。また3段アンプ用なので2段増幅回路では位相が逆になるため、NFBを掛ける時はPとBを逆に接続する必要がある。
  Outline

まずは下調べから。ヨンニーを4本持っていてもプッシュプルで使えるとは限りません。
元々捨てられていたモノだし、寿命かも知れません。

そこで当時は持っていなかったチューブチェッカーでエミッションをチェック。
調べて見るとエミッションどころではありませんでした。当時テスターで調べた時は大丈夫なハズだったんですが、エレバムの42はヒーター断線、DONの42はほとんどプレート電流が流れません。

予想はしていたのですが、ここまでダメな球を30年も持っていたのか・・・(-。-) ボソッ

気を取り直して残りの2本、マツダの42は破棄値に近くなっていますが何とか使えそうです。さすがにナショナルの42は当時にらんだ通り、新品に近い状態でした。

そこで手持ちの物でアンプを作ると言うポリシーに従ってシングルで作ることになります。

回路はヨンニーの音を聞きたいので・・・と最初は思って始めましたが、そう言えば高帰還の音を聞いたことがないな・・・よく高帰還の音は良くないと言われています。本当なんでしょうか。

ヨンニーは5極管だしダンピングファクターを考えるとどうせNFBのお世話になるんだからと、-12dBもの高帰還(ムカシなら中帰還と言う?)を掛けることにしました。規格表の出力3.2W時の歪率が8.5%と言うのも決心材料となりました。8.5%も歪みが出たらたまらん・・・

ここで既に最初のヨンニーの音を聞きたいと思ったことはどこへ行ったんだろう・・。NFBを深くするとほとんどは球の個性は失われて似たりよったりの音になってしまうと言われています。

ところで過去10年以上前に作ったアンプは必ずプリアンプを通していたので、音質に影響する入力ボリュームを付ける習慣がありませんでしたが、CD時代となった今はプリアンプを介さず直接入力することも多くなったので、このアンプからボリュームを付けるように習慣を変えます。

本来なら左右のゲイン誤差を考えて別ボリュームとすべきところですが、いちいち2つのボリュームをまわすのも面倒、しかも私の性格上細かいことは気にしないので、2連バリオームを使います。左右バランスがよほど気に入らなければ球を挿し替えて調整することにしました。


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パワー段の動作

42は規格表を見るとプレート電圧250V、グリッドバイアス-16.5V、負荷抵抗7kΩ時に3.2Wの出力が得られるとあります。UL接続では2W、三結では0.65Wとラジオにも満たない出力となってしまいます。

元々の出力が小さいためここは五結とし、UL接続にもしないことにしました。つまりラジオと同じ使い方をするワケです。

その代わりヨンニーあたりですと気安く使い、普通なら小さな出力トランスで組み立てるところを、コアボリュームのあるタンゴのFW-20-7Sを使い、ワンランク上の音を狙ってみます。

設計の段階で42のEp-Ip曲線が解らなかったため、乏しい規格表から標準動作を目指し、プレート電圧250V、バイアス電圧-16.5V、セルフバイアスと、そのままで使ってみることにしました。

当初UL接続を考え、手持ちの部品から見て山水のHS-7も視野に入れていましたが、やはり出力トランスはコアボリュームが命です。「インダクタンスの大きいトランス+五結」と「多少小さいトランス+UL接続」を天秤に掛けましたが、良くも悪くもトランス次第と判断しました。


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ドライバー段の設計

42は5極管ですので入力感度は良く、前段は1段で済むのでシンプルに・・・と言うのは言い訳で、じつは余っていた6Z-DH3Aを使いたいと兼ねてから思っていましたので、そのつもりで設計してみます。

同じST管で形・大きさのバランスも良く、完成時の姿を想像するとピッタリです。少々ラジオを意識し過ぎの気もしますが。

3W程度のアンプですので巨大になる事は避けたいので、6Z-DH3A+42+FW-20-7Sの組合せを考えるとスペース的に前段は1段と言うことになります。

ところが動作を検討してみると、6Z-DH3Aの1段ドライブでは無理と言うことが解りました。アンプ自体の入力感度を1Vに設定し、42の必要電圧は約11.5V(rms)ですから11.5倍のゲインがあればいいワケです。

6Z-DH3Aの3極部は規格表では100倍のゲインがありますが、実際には球のバラつきや歪み等の出方から見て50倍程度が限度で、ましてや使う球はすべて中古の予定です。ゲインを稼ぐには現実的ではないかなり高いB電圧が必要になることもマイナス要因です。

NFBを-12dBも掛けることを考えると、何度ロードラインを引いてもムリなものはムリです。

右のグラフは書いた代表的なロードラインしかありませんが、実は30本近く引いてみました。

そこで手持ちの球からドライバーになりそうなモノを探しましたが、あいにくST管では6Z-DH3Aよりゲインの取れそうなモノは無く、MT管の6AU6となってしまいました。

本来ならローノイズの6267/EF86あたりをチョイスするべきなんでしょうが、持ってないモノはしょうがないです。
 



使いたかったJRCの6Z-DH3Aと使うことになったNECの6AU6A。
JRCの6Z-DH3Aは中学生の時、悪友からもらった。



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電源部

電源部も「手持ちの部品を使う」をポリシーに、整流管数本を眺めて東芝の5U4GBが4本あるので使うことにしました。これもムカシ拾ったものです。

と言っても肝心の電源トランスは合いそうなモノが無いので調達する事になります。いずれヒーター電圧違いの2A5も使う事を考慮して、2.5V巻線のあるノグチのPMC-150Mに決定し、ラックスのチョーク4610でπ型フィルターを構成します。

実際にはPMC-150Mの定格負荷の半分くらいしか使わないため、B電圧は高めに出ることが予想されます。そのため300Ωのセメント抵抗で電圧を落とし必要な電圧を得ています。
この抵抗のお陰でコンデンサーインプットも22μFと、5U4GBにしては少し多めの容量を入れても安全です。
  傍熱管なのでヒーターのDC点火はそれほど必要ではありませんが、ワンランク上のアンプを目指している事と、どうせパーツを余らせているのでケチケチするなとばかり、DC点火としています。

ただこれはヒーターに太い線材(AWG16)を使いたいため、よるのが難しいのでDC点火にしたと言う理由もあります。

また、球のヒーターエージングや、特殊な整流管を使えるようにB電圧は独立スイッチを付けています。 以上のような結果から決定した回路が下記です。

赤字の温度は放射温度計で計測したため内部の一番高い温度です。表面温度はもう少し低いと思われます。



黒字=設計値、緑字赤字=実測値


→ シャーシー設計と使用部品