まずは故障の原因究明

入手当時、忙しさからなかなか手を付けられず、だいぶ経ってやっと原因究明に乗り出しました。

KMQ60は有名なOY15型アウトプットトランスの断線がよく伝えられていますので、まず始めにここを調べたところ、案の定レフトチャンネルが断線していました。

アウトプットトランスが断線すると言うことは、50CA10に過大電流が流れた証拠であり、他にも原因がありそうです。

大きな故障はもう1つ、B電圧整流用のシリコンダイオードが1つ破壊しており、ショートしていました。どうも過大電流が流れた結果、シリコンダイオードの破壊やアウトプットトランスの断線に至ったようです。
 

また、目視でも解った不具合はDCバランスの半固定VRが片側に廻しきってあったので、これはおかしいと思いアウトプットトランスとダイオード交換修理後、電流を計ってみるとパワー管の上下バランスが大きく狂っていました。これが大元の原因のようです。

電力容量の小さそうな半固定バリオームが使用されており、ひょっとしてKMQ60は長期使用でDCバランスが狂いやすいのかも知れません。

原因が一通り解ったところで、このまま修理するか迷いましたが、見た目も良くないので、一度完全分解し、サビなどのシャーシーの不具合も全て直し、さらに使いやすくするための変更もすることにして完全修理を目指しました。


● ● ●




↑部分塗装するところだけマスキング。




↑部分塗装したあと。




↑シャーシーの洗浄と塗装完了。




↑スピーカーターミナルはこのように。
  まずは機構的な修理と改造

これから長く使うことを考えると、どうしてもきっちり修理したくなります。

まずは完全に分解し、シャーシーで錆の出ているところはサンドペーパーで完全に落とし、部分的に塗装することにしました。できれば全体塗装をしたいところですが、ラックスのアンプは純黒では無く、微妙に茶色系の黒ですので塗料の色が合わせられません。そこで内側だけ目立たないように塗装しました。

OY15-5アウトプットトランスは片側だけ交換になりますが、その際、ツヤ具合が合わないので両方とも再塗装することにしました。これでツヤ消し具合が同じになります。

オリジナルの出力端子は小さくて廻しにくく、太いケーブルも挟めないので変更することにしました。その際、内側のパネルもアルミ板を切って自作します。これでバナナプラグも対応になりました。

ガリのある入力ボリュームは交換、バイアス電圧調整用半固定ボリュームは微調整のできるポテンショメータに変更、DCバランス用の半固定ボリュームもRV24型のボリュームに変更し、耐電力アップと微調整ができるようにしました。


● ● ●


回路の変更

新品を買ったわけではないのでアセンブリマニュアルなど無く、回路図は30年以上前に買ったラックスキット回路図集を頼りに検証したところ、どうも使用パーツどころか回路も違うようです。

そこで解ったのはKMQ60は何度かマイナーチェンジされているようで、回路や部品が変更になっているようでした。

このKMQ60は初期のもののようで、フロント銘板が見慣れたLUXKITではなく、LUXMANになっています。

回路的には、パワー管の50CA10に許容範囲内でなるべく高圧を掛けて出力を絞り出すようになっており、これが音は良いが故障しやすい原因になっているようです。

簡単な修理で各部電圧を測ったところ、規格いっぱいの電圧が掛かっており、コンセント電圧が多少高めに出ると規格を超えることもありました。

そこで50CA10のプレート電圧が下がるよう、初期モデルの電源トランスP1590を偶然持っていたS-1791に変更し、それと共にチョークコイルも4605からC-1744に変更して後期モデルと同じ電源仕様にすることにしました。


回路図

検証した結果。後期型の回路図に赤で前期型の訂正を入れてある。レストアした最終回路では無いのでお間違いのないように。


その他細かいところ

後期型のKMQ60は前期型には無いところがいくつもあり、煮詰めていった感じが伺えます。

ウィリアムソンタイプの特徴であるNFBはMLF(マルチループフィードバック)になっており、細かい位相補正をしたようです。但しこれは個々の部品の特性で変わると思いますので、実測してみて採用することにし、実際にはほとんど効果が出なかったためメジャーループのNFBだけにしました。

後期型の電源回路の1次側にはスパークキラーとノイズキラーが追加されており、これは迷わず採用しました。
 

通常ムラード型位相反転では上下球のゲインアンバランスを吸収するため、プレート負荷抵抗を若干違う数値にしますが、KMQ60では同じ値になっています。これは歪率を見てやはり若干変更することにしました。

なるべくオリジナルのままにしようと思ったのですが、DCバランス調整中にどうもふらつくので50CA10が原因かと思いきや、カップリングコンデンサーの漏れ電流が影響していたことが解り、オイルコンからシズキのポリエステルフィルムコンデンサーに変更しました。

その他、ケミコンや配線材なども色々交換しました。


レストア前の内部

レストア前の内部。但し不良ダイオードは外してある。


レストア後の内部

レストア後の内部。部品配置もだいぶ変えた。

→ 測定結果