泥沼の調整あまりにも製作期間が掛かり、後半グダグダやったせいか調整前に配線チェックをしていたらあっちこっち配線間違いに気付き、何度もハンダ付けし直してまた確認の繰り返しでした。今回は基板が多いのでチェックも大変です。パターン面が見えないので間違いに気づくのが遅かったり、間違えるとあっちこっち外さないといけなかったり・・・、やっぱり管球アンプはラグ板に限る、と改めて思った次第です。 バイアス調整中にうまく目標電圧に調整できず、回路に間違いが無いかにらめっこしていて気付きました。 この回路方式、割とポピュラーで昔からある実績のある回路ですが、良く考えてみたらSEPP上下の直流的なバランスが合うハズがありません。 SEPP上側を通った電流は下側に流れるだけでなく上側のグリッドリーク抵抗も経由します。つまりSEPP中点はピッタリ真ん中にならないハズです。 そこで調整中に43kΩ5Wの抵抗を追加改造し、上下の直流的なバランスがピッタリ合うようになりました。ピッタリ合ったからと言って各種特性が改善されるとは限りませんが、直流バランスが合ってないとどうも気持ち悪いです。 |
次にオーバーロードインジケーターを付けたことにより25E5のバラ付きが目立って解るようになって、気になりだしたら所有している61本の全25E5を測り直すハメになってしまいました。相当ムカシですが入手時に全てエミッションだけは簡易測定しておいたのですが、SEPPの場合それだけでは不十分でやっぱり同じ時期に測定してGmを揃えないと電流が偏ります。 結局他のアンプの25E5も全て外して測り直し、バルブにマジックで数値を記入、Gm順に並べて近い数値が16本取れる範囲のものを選別使用しました。 それでもバラ付きはあり、静的にGmを揃えるだけではどうもダメで動的にはそれでもバラついています。あとは本機上で位置を挿し替えて使用状態にしました。 他の2台用も測り直した中からペア取りして搭載し直し、そんなこともあってPPアンプのバランス調整バリオームの不良が発覚して途中修理したり、測定+書き込み作業で3日を費やしたりで、なかなか完成とは行きませんでした。 |
測定結果←8Ω時の入出力特性です。OTLは球のエミッションが大きく影響しますので、クリッピングポイントは1.4V入力時に左9.55W、右6.73Wと大きく違いました。ま、平均8Wと言うことで。但しそこに至るまではほぼ変わらない入力感度で、左右の音量差はありません。 グラフには書きませんでしたが、平均すると1パラ時2W、2パラ時4W、3パラ時6W、4パラ時8Wと大変解りやすい出力となりました。 試作機は5結で2W、こちらは3結なのに1パラ2Wとは納得がいきませんが、供給電圧の違い、ドライブ能力の違い、NFB量の影響等だと思われます。ここは後で突っ込んで調べてみます。 |
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←周波数特性です。今回もOTLらしく広帯域です。0.1dB程度のブレしかなく左右の特性曲線(直線?)がほぼ重なっていてグラフがいらないほどです。 本機もPTLで、測定機材のアースの都合上、100kHzを超えるレスポンスが計測できませんが入力トランスを介して他の測定器で見たところ、100kHz以上にピーク等はなく、なだらかに減衰していました。 10Hz以下も当初はレスポンス低下がなかったのですが、出力コンデンサーの容量を少しづつ減らして最終的にはなだらかに減衰するようにしています。但し10Hz以下は誤差が大きいのと別測定ですのでグラフには書きませんでした。 |
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←4パラ全球動作時の歪率です。今回も試作機と同様、失敗ではないかと思わせる小信号時の数値です。実は私の設計(と言うか計算)ミスで、ハムレベルが5mV近くになってしまったため、歪率に影響してしまいました。 こちらも球の組み合わせで大きく影響するため、クリッピングポイントあたりで左右が違っています。 ハムレベルは電流容量の大小で決まるため、小出力で使用する時は1パラや2パラにすれば低くなり、歪も少なくなります。そのため早く使いたいのと製作期間の長さから力尽きて、このまま使っています。いずれやる気になったら改善します。 |
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←ダンピングファクターも左右の特性曲線が重なっていてます。 どの周波数帯も8Ωに対して出力インピーダンスがピッタリ0.9Ωでしたのでダンピングファクターは9となりました。 周波数によって上下しないところがOTLらしく、これが出力トランスから開放された音の要因のようです。 |
試聴感想と改造予定本機も試作機と同じ印象の音でした。同じ25E5を使ったOTLでも回路方式が違うため、多少異なる印象になるかな? と思ったのですが、どうもトランスが無いと言う効果が大きくて、細かい違いは気付きません。OPTが音を相当汚していることは容易に理解できると思います。そのためOPTが一番贅沢な素材と作りをして音を汚さない工夫をした高級トランスが多く存在します。 しかし実は本当に音を汚しているのは電源トランスの方かも知れません。電源トランスは多かれ少なかれ僅かな振動でウナリが出ており、これが影響しているものと思われます。 そのためか本機のハムレベルが大きくなってしまったのにスピーカーからあまり聞こえません。ウーハーに耳を近づけてやっと気付くレベルです。 しかしこれは歪率にも影響していますので、いずれ改造が必要だと思っています。計算間違いによりB電源のケミコン容量が半分になってしまったため、2倍に増やしたいところですが、今さら物理的にできません。 ハム打ち消し電圧をヒーターから注出してFETで逆位相にし、初段のカソードに注入すると言う方法を相当ムカシに加銅氏がやっていたと思いますが、私も同じ間違いをしてしまいました。 対策としてかなーり昔に他の用途で買って余らせていたパワーFETがあるので、それでフィルター回路を組むことになると思います。 そうなると10V程度のB電圧低下が予想され、出力も低下すると思いますので、いまひとつ躊躇しています。ま、他に手も思いつかないので出力よりも音質優先でいずれ手を付けることになるかと。 そんなこともありましたが、本機もワイドレンジのノビノビとした音でNFBが不安定になる要素がなく、自然で誇張されたところがないのも、数値の悪い歪率をよそに気持ちよく試聴でき、今回もOTLの真価が発揮されたアンプとなりました。 |
↑ 10,000uF以上のケミコンを使用していると電源オフ後もなかなか放電せず、数十秒はOperateランプが点灯し続ける。でも容量は足りていない。裏板を開けて調整する時、このランプが消えてからいじれば感電しない。 ↑ 改造時に使えそうなFETが部品箱にあった。このFET、たしかクルマの電装品の自作か修理か改造で使おうと思って秋月で買ったと思ったが、いつ買ったかも覚えていない。袋も開封せずに数十年経っている。 |
↑ オーバーロードインジケーターでバラ付きによりどの25E5に電流が流れやすいかが解る。この写真では右のチューブロケーションからアイドリング18mA以上の球が点灯しているのが解る。 ↑ エミッションが高く電流の流れやすい25E5を後ろから順番に並べ、前列が一番電流が流れない球にしてみたが、実際にはご覧の通り。
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ところでなが〜い後書き↑ 実測したチューブロケーション。チューブチェッカーでなるべく揃えたが、それでもこんなにバラけている。なるべくSEPPの上下で合計電流が同じになるようにし、1パラ2パラでも問題ないように挿した。青丸ナンバーは61本の25E5に割り振った通し番号。EmとGm値も書いてある(小さくて見えませんが・・・すみません) オーバーロードインジケーターを見ていると、どんなに球の特性を合わせても完全にバラ付きは直せないことが解ります。 かと言ってだんだん電流が偏る様子もないので、25E5に限って見れば心配する必要はなさそうです。 このインジケーターのお陰で4Ωなどの低インピーダンススピーカーも安心して駆動できます。 ようはスピーカーが何Ωであれ、大電流が流れなければパワー管が破損しないワケで、その様子がひと目で解ります。 このインジケーター、あまりにも面白いので現在はスレッショルドレベルを下げて、今はアイドリング電流を少し超えた1本あたり30mA超で点灯するように設定しています。 つまりオーバーロードインジケーターとして使っていません。ただのVUメーターのように使うのであれば、もう少し色に凝れば良かったとさえ思っています。 LEDはコストダウンのためLEDクロックから外した余りモノを流用したのでブルーになってしまいましたが、常に点灯させるのでしたら本体に合わせてピンクかレモンイエローにした方が良かったな?と、少々後悔ありです。
さすがに1パラでは音の大きさは通常視聴に間に合っても、頻繁にオーバーロードインジケーターが点滅するので力不足な印象ですが、2パラにすれば通常は充分なパワーで音楽視聴ができました。 もちろん大音量の時は4パラにするのが良いのは言うまでもありません。NF量を合わせているせいか音もそれほど変わった印象は受けませんでした。 この2つの機能はセットで効果が倍増した印象で、何だか使っていても面白いアンプとなりました。 |
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