左から元祖6RB10、6RA8、LUXMANプリントの6RA8。 プレートや細かい作りまでまったく同じ。 新品の6RA8と使い込まれた6RA8。消耗が激しくここまでゲッタが薄くなるケースがほとんど。但しこれでもほとんど性能低下しておらず、試験結果はほぼ同じ数値。 6RA8の代表規格
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謎多き有名管、6RA8その1・最大定格6RA8は有名な割にはスペックが今ひとつハッキリせず、設計上の障害となっていました。 現在ではネット時代ですし書籍も豊富にあり、全て簡単に調べることができますが、当時NECは東芝やナショナルのように真空管規格表を売っておらず、所有していた本を片っ端から調べても、ほとんどの本に標準動作例は示されているものの、最大定格が書かれておらず困った記憶があります。 そのためか6BQ5や6GA4と比べても雑誌記事は極端に少なかったと思います。 実は当時作られた他作の6RA8シングルアンプを数台解析したことがありますが、驚いたことに私の旧作も含めて全て最大定格をオーバーする定数になっていました。 後から調べて解ったことですが、これは参考にした雑誌記事が全てそのような定数で設計されており、ひょっとしたら当時の作者も最大定格を調べ切れていなかったのかも知れません。 そんな状況でしたので、ただでさえ無理して設計されたMT管・6RA8を使用した当時のアンプはみんなゲッタが薄くなっており、相当消耗させていました。 その2・ピンアサイン 6RA8は1、7、8番ピンがIC(Internal Connection・内部接続あり)となっており、ショートするといけないので使用時はこの3つのピンは使ってはいけないことになっています。 アンプ製作ではその通りに従えば良いのですが、チューブチェッカーで状態を調べる時はICでは済まず、どこかに接続しないといけません。そのためかGm、Em等の測定記述がほとんどありませんでした。 独自に調べてみたところ、所有している11本全てが1=P、7=NC、8=Pとなっていました。6RA8の元祖と言われる6RB10は1=G2、7=G3+K、8=IC(G2)となっており、それを内部で3結にしたのが6RA8とのことですので、間違いないと思います。これが解ればGm、Em等が調べられますが、もし違う個体が見つかりましたらお教えください。 せっかくなので6RA全シリーズ記念撮影。左から6RA2、6RA3、6RA5、6RA6、6RA8、6RA9・NECと東芝が交互に並んでおり、競って登録したようだ。松下はない。 その3・ホントにいいの? 後から解った規格ですが、小さなMT9Pのバルブで15Wものプレート損失があります。これより大きなGT管の6GA4は13Wです。ヒーターも6.3V/1Aと大きな熱量で、実際使用中の温度を計測すると200°Cを超えていました。 これは相当ムリな設計のような気もします。昭和の時代は性能重視で、真空管は消耗品扱いの設計だと言えます。額面通りに使ってもいいの?と疑いたくなります。 作りも当時は東芝がキッチリしていたのに対し、NEC製はズラズラヒーターで雑な印象を受けていました。 でも音は端正な6GA4に対して6RA8は豊潤、私好みで良かったと記憶しています。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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旧作からの変更点シャーシーの変更できるだけオリジナルのパーツを流用すると決めましたので、シャーシーや回路も元に近いまま使います。 但しヘッドホンはほとんど使わないので、リアパネルはスピーカー端子を追加したり、使いやすい3P-ACインレットに変更するなどの加工はしました。ACコンセントを付けていましたが、この穴はアルミ板を切って塞ぎ、スピーカー端子のスペースを確保しました。 スピーカー端子を付け、ヘッドホン端子も活かすとなると配線が大きく伸びてノイズを拾いそうなので、ヘッドホン使用は辞め、穴を塞ぐためオペレーションランプ(B電圧が有効のときに点灯する)を取り付けることにしました。 後からよく考えてみたら、本機はシリコンダイオード整流のため、オペレーションランプを付けてもインジケーターとほぼ同時に点灯/消灯するのでムダのような気がします。ま、穴が空いたままの方が余程みっともないので、とりあえずと言うことで。 加工しますので、この際トランスも含めて全て再塗装してキレイにします。 但し今回は出力トランスの塗装で手を抜いてしまい若干失敗です。 元の塗膜を落として行くと、過去に何度も色々な色で塗装したようで、グレー、黒、水色、白などかなり厚塗りされていました。本人は覚えていないんですが。 その塗膜を完全に落とす際、元の凸凹を修正してあるパテも落としてしまい、サフェーサーと塗装だけでは凸凹になってしまいました。 パテによる修正はTANGOなど他のメーカーでも良く見られます。 今回ずっと未使用で保管してあった田代電機の配線プレートとエンブレムも使用することにしました。 今まで使わなかった理由ですが、シングルトランスを注文したのにPP用のプレートを送ってきたり、エンブレムとOPT上部の凹みのサイズが合わなくて貼れなかったなど、トランスメーカーによくある詰めの甘さで当時は使う気が失せていました。 でもそういうモノに限って音が良かったりします。2A3でも6RA8でも本トランスは大変良い音がしました。 今回はプレートはそのまま使用し、エンブレムは凹みに合うサイズを自作して貼ることで対応しました。 回路の変更 元は古い雑誌記事を参考にした回路で最大定格を超えた定数になっていますので、これは定数を見直して変更します。 本当は回路構成も見直したい気もしますが、プリント基板を使ってしまったため大きな変更はできず、動作電圧・定数のみの変更にとどめました。 まず、B電圧は電源トランスの2次側タップを変更して大幅に電圧を下げます。これだけで6RA8の最大定格から70.5%程度のプレート損失になり目的達成です。 他にも初段管の動作を見直すことにしました。元は12AX7を使っていますが、6RA8は低rp・高gm球ですので12AT7に変更して駆動インピーダンスを下げることにしました。 おそらくそうすれば多量のNFBを掛けなくても広帯域・低歪のアンプになると思います。 基板などパーツ流用によって妥協した点もあります。 基板の穴サイズのせいでケミコン容量は大きなものに変更できず、若干スタガー比が不足しています。発振などのトラブルが出た場合のみ対処するようにします。 もう1つ、6RA8のカソード抵抗のディレーティングが足りません。まだ若かりし頃でしたので当時の雑誌記事を真に受けて従ったため、実容量の3倍程度のワット数なので、使用中は相当熱くなります。当時の記事はみんなこんなもんでした。 抵抗は熱くてもそうそう断線したりしませんが、隣のバイパスコンデンサーを炙っているので、旧2A3シングルの時のように、そのうち破裂するかも知れません。 そんなこともあり、今の私は10倍程度のディレーティングを目標にしています。10倍あれば長時間使用でもほんのり温かい程度ですが、5倍だと触れるけどかなり熱い、3倍だと火傷する熱さになります。 それぞれ水上温泉、渋温泉、草津温泉の源泉、と言ったところでしょうか。(余計解りにくい?) 本機は以前から凝ったことに、内部にアルミ板を湾曲に折り曲げた反射板の中に電球を入れると言う光る銘板を付けていました。 改造後も角穴が空いたままですので、そのまま使いますが、なるべくシャーシー内の温度を上げたくないので、フローランプ(グリーンのネオンランプ)に変更し、単純にプリント基板で取り付ける方法に変更しました。 これなら以前は窓にクリアアクリル+乳白アクリル+緑アクリルの3層構造でしたが、緑アクリルを省略でき、高さに少し余裕ができます。 前回はゴム足を両面テープで付けていたためよく落ちて何度も貼り直していたので、今回はビス留めにした。 |
再塗装後のシャーシー・トランス一式。今回は在庫塗料の都合で色を決めた。 元のACコンセント穴はアルミ板を切って埋めている。オリジナルパーツ流用の観点から、RCA入力ジャックとスピーカー端子の間隔は妥協。 田代電機の配線プレートとトップエンブレム。両方とも気に入らなかったので、数十年未使用のまま。 OPTの丸形田代電機エンブレムはサイズが合わないので自作して貼り付けた。でも思ったより色が薄いので、そのうちまた作り直すつもり。 今回は気に入らないと言いながらトランスの銘板もちゃんと使用した。 前作では電球+反射板を付けるなど、凝った光る銘板は少し簡略化してフローランプ2個使用に変更。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
黒字=設計値、緑字・赤字=実測値 旧作を利用している都合上、ベストな定数ではない。12AT7のRk820Ωが1/4Wなのに82Ωが1Wなのは在庫の都合上。100uF16Vもできれば220uF以上、6RA8のRkはできれば5Wか10Wの抵抗が欲しい。古い規格の抵抗を使っているため、360Ωや250kΩなど今は無い定数のものも使用している。ヒーターも基板を使っている都合上、1巻線から3球分とっているが、できれば分散させた方が良い。温度はコア部の表示なので実際には表面温度はもう少し低い。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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