測定結果

旧作は43年も前でまだ測定機材を持ち合わせていなかったため、当方自作の6RA8シングルアンプとしては初めての測定となります。

但し、他作のアンプは測定したことがあるため、ある程度6RA8の傾向は把握しておりました。

それらはほとんど12AX7による単段ドライブで、NFBは多めに掛かっている割には感度が高く、歪みが多めに出る印象でした。

歪みが多いからと言って音が悪いワケではなく、どのアンプもそこそこ良い音はしていたと思います。


 

本機の裸ゲインは左18.5dB、右17.6dB、NFB量は左-5.6dB、右-5.2dB、トータルゲインは左12.9dB、右12.5dB、残留雑音は左1.08mV、右0.64mVでした。

私の最近のレイアウトと違って本機は左側に電源トランス、信号部は右側ですので、いつもと残留雑音の数値が左右逆になっています。

一番気になっていたプレート損失は設計値10.6Wに対し、実測11.2Wでした。最大定格15Wなので約75%で余裕を持ったオペレーションです。B電圧が若干高めに出たための結果です。

Epを抑えたため消費電力は56Wで、電気大食いの6RA8にしては低消費電力です。




入出力結果です。本機は12AT7でのドライブにしていますので、入力感度は少し低めです。

  左チャンネルで見るとクリッピングポイントは1.26V入力時で3.5W出ており、大きくB電圧を下げた割には十分な出力が出ています。




周波数特性です。12AT7で低インピーダンスドライブした効果が一番現れています。

OPTの特性が良いことも相まってシングルアンプらしからぬ高域の伸びです。


  ピークの出方は左右でバラつきがあり、左チャンネルは485kHz、700kHzに、右チャンネルは310kHz、515kHz、630kHzでしたが、最近の私の方針で音がつまらなくなってしまうので、この程度のレベルなので位相補正はしないことにしました。

もし発振などの兆候がでるようでしたら、改めて補正することにします。




歪率はカーブが重なるので左チャンネルのみ表示しています。

こちらも12AT7ドライブの効果が出ており、数台計測した6RA8シングルの中では一番低歪でした。

  100Hzだけ少し多めですが、これはいつものことで、小さなOPTでインダクタンス低下と、若干ハムを拾っているためだと思われます。

これでも実は妥協しており、ホントは旧作流用せず新規で作ればもっと低歪にできると思います。




ダンピングファクターです。こちらも低インピーダンスドライブの効果が出ており、単純な2段のシングルアンプにしては高めの数値になりました。

メインとなる可聴帯域で左4.3、右4.0となっています。

  この数値は高gm、低rpである元々の6RA8の性能も影響しています。

これなら無帰還にしてもそこそこダンピングの効いた良い音が期待できます。


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試聴結果

あー、そうそう、こんな音だった・・・

昭和の人間ですからこの音には懐かしさを覚えます。6RA8は作りが雑だとか熱いとか寿命が短いだとか散々悪口を言っても音は豊潤でいいんです。

傍熱型だとか内部三結だとか言ってもちゃんとトライオードサウンドです。

昔と違ってスピーカーや音楽ソースなどが全然違いますが、それでも6RA8は6RA8でした。

MT管で6.3Wもの電力を消費するヒーターはかなり明るく、これも6RA8らしい雰囲気を出しています。

 

 

本機はパーツをムダにしない、早く音が聴きたいとの思いからだいぶ妥協点があります。

とくにヘッドホンジャックをやめて+B表示ランプを入れたり電源スイッチも近く、ボリューム廻りにAC配線が通っているなんて、今思えば最悪のレイアウトです。

そのため今回はわずか3cmの長さでも入力配線にシールド線を使うなど、できるだけ影響を受けないよう気を使いました。

新規で作ればレイアウトの悪さやスペースの都合で使えなかったワット数の大きな抵抗などが使え、おそらく無帰還でももっと良い性能のアンプにすることができると思いますので、いつかは・・・と思う良さを感じました。





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