↑シャーシー加工がだいたい終わって仮組み中。A:山本音響工芸のUX-UFソケット。B:TANGOのチョークにも変更できるよう、余計に穴開けしてある。C:ミヤマのスライドスイッチ。D:NKKの大電流が流せるロータリースイッチ。フィラメント電圧切換えに使用。 |
↑300Bはこの3種類をテスト。一番古いオリジナルのデータで設計すれば全ての300Bで使用できるはずなので、WEの旧データで設計、測定。 ↑2A3はこの3種類をテスト。300Bと同様にオリジナルのRCAで測定、基準を作り、マルコニーは他の2A3アンプでも使っているので比較用、ジムテックは日本製の300Bと同じメーカーで音質比較ができる。 ↑左:アンペレックス旧西独製12AU7A。このメーカーは世界各国での生産表示があるが、OEM生産が殆どなのかも知れない。右:GECのML4とマルコニーのML6。共に英国製。2A3とメーカーが揃えられるが生産国が違う。(2A3はカナダ製) ↑パワートランスの塗装前。 スポット溶接の凹みが気になるのでパテ埋めした ↑今回の構成シャーシー一式 |
使用パーツ10数年も前から計画していたため、ほとんどは手持ち(と言うか徐々に買いそろえていたもの)のパーツで作ることになります。今回はデザインをする上でキーになる重要パーツがいくつかあります。使用球PX25はムラード製とのことでしたがバルブにPX25と書かれており、DO24とは書かれていないので違うような気もします。元々MOV系の軍箱に入っていたためと、当時はメーカーの扱いがわりとイイカゲンだったと聞いていますので、England製には違いないでしょうが、MarconiかOSRAMかも知れません。(本機では一応Mullard製として話を進めます)300BはWestern Electricの97年物がメインになります。この球は当時復刻されたと聞いて完実電気扱いのものを買っておいたものです。他に昔から持っていたものでCetron、JMTEC、確か一番最後に買ったのがElectro Harmonixで、それぞれ差し換えてみます。 2A3も昔は持っていなかったRCA、JMTECなど数十年の間に徐々に溜まってきて、気がついたらMarconiも含めて10数本になっていました。 ML4はGEC、ML6はMarconiのものを差し換えます。この球はパワー管としても使えるほど強力なドライブができることで有名で、機会があれば使ってみたいと思っていました。 初段管12AU7Aもどうせなら欧州球で揃えたく、いつもは国産を使っていましたが、今回はAmperexのものを使うことにしました。W.Germanyと書いてあるのでベルリンの壁が崩壊する以前の年代のものです。 ソケット今回のアンプは山本音響工芸のUX-UFソケットがあって初めて成り立つものです。高価ですが良くできており他に選択肢がありません。このソケットはUFの方に球を挿した時、センターから偏芯(約2mm・実測)していますので、向きによっては不自然に見えることがありますのでシャーシーデザインは注意が必要です。そのため今回はPX25時にプレートが正面から見える向きにできませんでした。まあ狭い位置にUXとUFを共存させたソケットですので、これは仕方ないことです。 ML4/ML6用の方はUF5P専用ソケット、12AU7AはQQQ(国産)の古い手持ちのソケットを流用しました。 トランスアウトプットトランスはやはり数十年死蔵していたラックスのOY15-3.5KHSを使用します。一番の理由はサイズが丁度良いからです。他にもタンゴのFW-50-3.5Sも長年死蔵していますが、チョークドライブにより通常よりトランス類の数が多く、大きくて重いアンプとなるため小さい方を選びました。良く考えたら音質的なことよりも大きさ・重さを先に考えるなんて本末転倒です。でも年齢を重ねて来ると重たいアンプは結構しんどくなってきます。とくに私のように腰痛持ちでは相当気をつけないとアンプも作れなくなります。 プレートチョークにはラックスの4691を使いました。2巻線入っていて直列で100H/35mA、並列で25H/70mAとして使えますので、あとで設計変更して電流が増えても大丈夫と言う理由で選びました。グリッドチョークとしても何とかそのまま使えそうなインダクタンスがあります。 このラックスの13型サイズのものとタンゴのTCシリーズのチョークは大きさがほぼ同じ、しかも同じサイズのドライバートランスも豊富にありますので、後々回路を変更した時にシャーシーの追加穴開けをする必要がないのも採用した大きな理由です。 パワートランスは色々なパワー管に合わせるため特注したかったのですが、端子数の問題でムリと解りました。そこで在庫している中から旧タンゴのMS-200CT-Aを使うことにしました。 余談ですが実はノグチトランスにPMC-120Mと言う芸術的に端子数の多いトランスがあり、絶好の差し換えアンプ向きで使いたかったのですが、送信管を想定しているのかB電流が120mAまでしか取れず、残念ながら電流不足で断念しました。 PMC-120MはB電圧が0V-300V-350V-400V-450V-500Vと選べ、ヒーターも0V-2.5V-4V-5V-6.3V-7.5Vが2回路あり、これほど広い電圧が選べるトランスは見たことがありません。端子が全て並べきれないためAC100V入力がリード線引き出し式になっています。 本機で使うMS-200CT-Aは300BやPX25用として開発されただけあって、使い易い電圧・電流の巻線構成ですが、昭和当時の設計ですのでB電圧は整流管を使用、フィラメントは交流点火を想定したものとなっています。 電源回路のチョークコイルはラックスの4610を2つ使い、チョーク前から左右チャンネルに振り分け、セパレーションを向上させています。と言うのは言い訳で、ジツはデザイン上、大きなチョークが搭載できなかった・・・だけです。 |
スイッチいつもスイッチなど小物パーツの説明はいちいちしていませんが、今回は重要パーツなので書くことにしました。実は差し換えアンプを設計する時、いつも切換えスイッチの接点容量が気になっていました。高圧回路の場合、たいがい耐圧が、ヒーター回路の場合、スイッチの電流値が足りないことが良くあります。 スイッチの規格を良く調べてみると実は許容電圧が30V程度の信号用のものが多く、ロータリースイッチ等はまず使えません。トグルスイッチが割と高圧大電流のものが多いですが、それでも通常のものはAC250V程度です。 今回はデザイン上、トグルスイッチをどうしても使いたくなかったので、以前からことあるごとにスイッチを探したりテスト購入したりしていました。 で、採用したのは現在廃盤ですがミヤマのスライドスイッチで、AC125V/3Aの接点容量があります。当然B電圧の切換えには全然足りませんが、電流を流した状態で切り換えないと言う理由でほとんどの切換えに使うことにしました。 ヒーター電圧の切換えは多接点である必要があるため、大きさと接点容量を勘案してNKKのHS-13型ロータリースイッチを使いました。AC6Aまでの切換えができます。 |
CR類カップリングコンデンサーの容量が大きくなるといきなりサイズが大きくコストも高くなって結構困ることがあります。そこで音質も含めていくつか候補を試した結果、以前スピーカーのネットワークを自作した時に使って良かったAUDYN-CAPと言うドイツ製のポリプロピレン・フィルムコンデンサーを使うことにしました。 このコンデンサー、ローコストな割にはクリアな音でLCRメーターでの測定値もD=0、Q=∞、ESR=0Ω、θ=-90°と各項目今まで見たことのない最高値で抜群です。 B電圧のコンデンサーインプット部分もF&Tと言うドイツ製のケミコン、他のコンデンサーは全て日本製のオーディオグレードのもの、抵抗はタクマン電子のREYオーディオ用とセメント抵抗がメインです。 配線材はもう無くなると言われて何年も前に三栄無線から購入した日立やモガミの無酸素銅線を信号回路に、電源部は古河電工のBX-S耐熱電線を使いました。 |
Layout今回のシャーシーは少し大きめで重量もあるためEL34/6CA7プッシュプルと似たような構造にしました。EL34時に詳しく説明しませんでしたが、トップパネルはホコリの問題を解決する2重構造にし、飾りビス4本を外せば上に引き抜けるようになっています。 EL34時はかなり重量級アンプなのでこの構造が大変役に立ちましたが、少々クリアランスを小さく取り過ぎて、トランスの寸法誤差やわずかに傾いたブロックケミコンのせいで、引き抜きにくくなってしまいました。 今回はその教訓もあってもう少しクリアランスをとり、引き抜き易く調整しています。 フロントパネルに4つのツマミがありますが、左からボリューム、NFBの切換え、ハムバランサー2つです。 ハムバランサーごときになぜメタルツマミまで付けてフロントに出したかと言いますと、パワー管を差し換えるたびに廻すものですので、廻し易い方が良いと考えました。 通常はハム音を聞きながら調整すれば良く、厳密に小さくしたい場合はテスター棒をテストポイントに挿せるようにしてあります。 球差し換え時の切換えスイッチ類は全て球の後ろ側に配置し、オペレーション中は気安くいじれないようにしています。 パイロットランプは今回も裸のネオン球直出しです。 トランスの色ですが本当はプレートチョークの4691も電源チョークの4610と同じモスグリーンに塗装するつもりでしたが、新品のトランスでまだキレイなので塗装を躊躇してしまいました。数年してくたびれて来ましたら取り外して同色に塗装します。 今回はレイアウトに若干失敗してしまいました。実はフィラメント交流点火時に右チャンネルのハム音が少々残ってしまいました。 トランス類が多いので仕方ない部分はありますが、考えてみたらトランスの磁界が一番ハムに影響するので、いくら磁気シールドのしっかりしたチョークコイルとは言え、プレートチョークはドライバー管と逆にし、電源チョークと離すべきでした。 |
↑トップパネルは引き上げて取り外しができる。 ↑旧型PX25(ナス管)が一番大きいので、 レイアウトデザインはPX25を基準にした。 他はML6、12AU7A、CK1006。 ↑WE300B、ML6、83セット時、少し間隔が空く。 ↑RCA2A3、ML4、5Z3セット時。 小さいので少し間隔が広くなりすぎかも? |
↑結構狭くて混み合ってしまった。セメント抵抗はほとんど2階建てになっている。 |
→ 測定結果と試聴 |